そこ、めくってください

 昨日の続きでございます。
 下記の本件意匠について、引用意匠との類否(3条1項3号)&創作容易性(3条2項)が問題となっておりました。
 
 〇まずは、本件意匠と引用意匠の類否について。
 
 裁判所は、両意匠の共通点として、
  ・背割線の括れの形状とか、
  ・中央分離帯部と左右の剥離シートの縁が密接している点
 を挙げています(判決文10頁)。
 これは誰もが一見して「共通してる」と認めるところでないでしょうか。
 
 一方、両意匠の相違点として、
  ①左右の剥離シートの帯状部の有無、
  ②着色の仕方、
 の2点を挙げています(判決文10頁)。
 
 本件意匠
 
 引用意匠
 

 そして、上記共通点・相違点から、両意匠の類否についてどのように認定したかというと…
 『本件登録意匠は,上記のような2色の色分けを採用することにより,上記背割線の形状を際立たせるとともに,機能的にも中央分離帯部と左右の剥離シート部の両部分を明瞭に見分けることを可能とするものであるのに対し,引用意匠の剥離シートは透明であるため,透明シートの切断線の視認性は相対的に低いものとなっているから,本件登録意匠における上記差異点は,全体として背割線を含む形状における共通性を凌駕する影響を美感に与えるものである。
 そうすると,本件登録意匠と引用意匠は,上記共通点を考慮に入れたと
しても,全体としては両意匠に係る物品「貼り薬」の需要者である使用者に与える印象が大きく異なるというべきであるから,本件登録意匠と引用意匠が類似するということはできない。』(判決文10~11頁。下線は私が付しました)

 つまり、本件意匠の着色の仕方がキーポイントとなったわけですが、原告さんは色についてこのような主張をしておりました。
 『色彩学の観点から,審決が重視した本件登録意匠における左右の剥離シートの帯状部と中央分離帯部に係る各色彩の相異が類否判断に与える影響について検討すると,まず本件登録意匠の創作者が本件登録意匠に係る物品の部分において,全剥離シートの中央部に左右対称に設けた括れのある背割線を境に,中央分離帯部の剥離シートとその左右外側部の剥離シートの一部とに,明度,彩度の異なる色彩を形成した理由は,その「物品の説明」に記載しているとおり,使用者の視認し易さを考慮した実用的機能性を目的としたものであるとともに,色の三属性である色相,明度,彩度に関する単純な問題である。すなわち,本件登録意匠における前記青色の色相は隣接するものであり,濃い方がセルリアンブルー(鮮やかな青),淡い方がスカイブルー(明るい青)であるから,この配色自体には創作性があるといえず,創作者ないし当業者においては,当該物品の前記部分に対し自由に選択して使用できる配色である。
 因みに,創作者が隣接する他の色彩の配色を選択しなかったのは,青色系は患者に対し精神的な鎮静効果があることが医学界では常識となっているからである。
 したがって,本件登録意匠における当該部分の配色は,当該物品における形状に新規な色模様を表現したといえるほどの構成態様から成るものではない。

 医薬品に青色系が使われやすい理由も述べられていたりして、そのまま引用しちゃいました。

 これに対し裁判所は、
 『本件登録意匠は,中央分離帯部に接する左右の剥離シートに帯状の模様を配し,これと中央分離帯部とを塗り分ける
ことにより,全体として2色の色分け模様を構成した点に美感上の差異を生じさせているのであって,単に配色のみで引用意匠との美感上の差異を生じさせるものではないから,原告の上記主張は採用することができない。

 と述べました。
 
 〇次に、創作容易性について。

 とりあえず、『本件登録意匠の背割線の形状が少なくとも本件登録意匠の出願前に見受けられるものであることは引用意匠及び甲2公報に係る意匠の示すとおりである』ことについては、誰もが頷くでしょう(判決文12頁)。
 
 しかし、裁判所は、
 『左右の剥離シートの中央分離帯部に接する上下全長に帯状部を設け,その帯状部を中央分離帯部よりも明色とした態様が本件登録意匠の出願前に公然知られていたことを認めるに足りる証拠はない。
 そして,左右の剥離シートの中央分離帯部に接する上下全長に帯状部を設けることや,その配色をどのように施すかについては創意工夫を要するものというべきであるから,本件登録意匠は,公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作することができたものとは認められない。

 と判示したのでありました(判決文12~13頁)。

 ちなみに原告さんは、「医療用の物品に係る当業者なら、引用意匠に公知の色彩を結合すれば、本件意匠を容易に創作できた」と主張していましたが(判決文8頁)、
 裁判所は『本件登録意匠は単に色彩の結合(配色)のみで構成されるものでない』として、原告さんの主張を採用しませんでした(判決文13頁)。

 …ということで、本件意匠は引用意匠と類似もせず、創作容易でもないと判断され、原告さんの請求は棄却されたのでありました。

 ちなみに…
 
 原告さんの登録意匠である甲2公報の意匠って、この商品に使われてますか?
 被告さんの本件意匠の方は、どの商品だかわからんかった… 

 本日はこの辺で。 
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