昨日は東海支部のおじさま弁理士さんたちと呑みに行き、大先輩の解説を(よくわからんままに)聞きながらおいしいワインを奢っていただきました。
支部活動やってると、こんないいこと、結構あります(笑)。東海はこぢんまりとした地域なので、皆さん顔見知りで仲がいいんですよ~。
さて、今日は木曜日なので意匠の新着審決のご紹介をいたします。張り切っていってみよー!
■■■意匠新着審決【3条1項3号系】
●不服2009-23025
意匠に係る物品「おたま」
本願意匠(意願2008-27930)と引用意匠(意匠登録第1081308号)は非類似と判断されました。
*判断主体: 看者
*公知意匠の参酌: なし
本願意匠
引用意匠
『本願意匠は、全体を肉厚とし、外側凸面を、球面に近い曲面とその一部を削り取ったような平坦面とによって構成し、内側凹面は、平坦面を用いずに滑らかな曲面によって構成したのに対し、引用意匠は、全体を肉薄とし、外側凸面を、下方に従い曲率を大きくした曲面と、これになだらかに繋がる平坦面とによって構成し、内側凹面は、外側凸面と相似の曲面と平坦面とによって表裏一体的に構成しているという差異が認められる。そして、これらの差異は、いずれも通常の使用状態において明確に視認されるものであって、特に内側凹面における平坦面の有無の差異についていえば、汁の容量や盛りつけの際の操作性等、調理具としてのおたまじゃくしの基本的な機能に直接的な影響を及ぼすものであり、指で触ったときの感触や洗浄のしやすさにも大きな影響を及ぼすことを考慮すると、当該差異は強く看者の注意を惹くといわざるをえないから、この差異の類否判断に及ぼす影響は大きいものである。また外側凸面の曲率の差異も、球面をイメージさせるか否かの点で、看者の印象に顕著な差異をもたらすものとなっており、本願意匠においては、外側凸面に平坦面を形成し、これに対応する内側凹面に平坦面を形成しないことによる対比効果も、看者の一定の注意を惹くものと認められる』
●不服2010-8212、不服2010-8214
意匠に係る物品「配管用保護キャップ」
本願意匠・本願関連意匠(意願2009-14040、意願2009-14039)と、引用意匠(外国カタログ「DaspolymutanInstallations-System」 第16頁所載の「管端キャップ」の意匠)は非類似と判断されました。
*判断主体: 需要者
*公知意匠の参酌: 共通点につき『両意匠のみにみられる態様とは言えないから,この共通点のみで類否を決することはできない。』
本願意匠
本願関連意匠
引用意匠
『相違点は,キャップの内周側面が,配管の端部に接合される部位であることを勘案すると,その具体的な態様が,この種物品にあっては使用時に需要者の注意を惹くものであるといえ,かつ,内周側面上端部に雌ネジを設けた本願意匠の態様は,本願意匠の特徴をよく表すところと認められ,この相違点が類否判断に及ぼす影響は大きいというべきである。』
なお、相違点はこちら。
本願意匠と引用意匠
『略円筒形の内周側面について,本願意匠は,上端部に雌ネジを設けているのに対して,引用意匠は,同部位に雌ネジを設けず,内径をやや狭くし,肩部を形成している点,
側面視において,本願意匠は,ごくわずかな上細状であるのに対して,引用意匠は,上下同径である。』
本願関連意匠と引用意匠
『略円筒形の内周側面について,本願意匠は,上端部に雌ネジを設けているのに対して,引用意匠は,同部位に雌ネジを設けず,内径をやや狭くし,肩部を形成している点,側面視において,本願意匠は,ごくわずかな上細状であり,また,周側面下側(開放部近傍)の径をやや幅広として,スカート状に拡径しているのに対して,引用意匠は,上下同径であって,スカート状の拡径はない点。』
■■■意匠新着審決【9条・10条系】
●不服2010-5577
意匠に係る物品「ハードディスクレコーダー付ビデオカメラ」
本願意匠(意願2008-32995)と引用意匠(意匠登録第1369105号)は非類似とされました。
*判断主体: 看者
*公知意匠の参酌: 共通点につき『従来から見受けられる態様であり、両意匠のみに格別新規な態様ということはできず、それらの点のみをもって両意匠の類否判断を左右するものとすることはできない。』
本願意匠
引用意匠
『差異点に係る態様が相乗して生じる視覚的な効果は、看者の注意を強く惹くものであるから、両意匠の類否判断を左右するものというべきである。
とりわけ(b)及び(d)における、レンズ鏡筒部の構成及びファインダー部の上り傾斜の態様の差異(b-1)、フラッシュ部の態様における差異(b-2)、ハードディスク部の上り傾斜の態様の差異(d-1)、ハードディスク部における操作部の態様の差異(d-2)は、両意匠に異なる視覚的効果を生じさせており、通常手にとって操作をするこの種物品分野における看者にとって、これらの相違は部分的なものに留まるものではなく、(a)における、高さと横幅の比率の差異から生じる、スリムな本願意匠と、幅広でどっしりとした引用意匠といった印象の差異とも相俟って、両者の印象を大きく決定付けるものといえる。また、その他の差異点については、それらのみではいずれも両意匠の類否判断に与える影響は小さいが、上記差異点(b)及び(d)に係る態様と相俟って、意匠の類否判断に影響を与えるものであるから、これらの差異点に係る態様が相乗して生じる視覚的な効果は、両意匠の類否判断に重大な影響を与えるものといえる。』
●不服2010-708
意匠に係る物品「コンロ付き流し台」
本願関連意匠(意願2008-4951)と本意匠(意匠登録第1357933号)は類似と判断されました。
*判断主体: 需要者
*公知意匠の参酌: 『本意匠のように正面側と背面側とに扉や引き出し等を組み合わせて設けることは、既にこの種流し台の分野においてありふれた手法であり(例えば、意匠登録第1193047号等参照。)』『一枚の幕板形状も、本願意匠の出願前にこの種流し台の分野において公然知られたものであり(例えば、意匠登録第1086085号、意匠登録第1257606号等参照。)』
本願関連意匠
本意匠
『この流し台は、部屋の中央部に配置される、いわゆる「アイランドタイプ」のシステムキッチンに係り、背面側が壁に当てられて隠れる部分ではなく、背面側からでも通常の使用の状態において利用されるものであり、また、システムキッチン自体は、使用する需要者によって流し台を構成する扉や引き出し等の各ユニットが選択されて組み合わされて設計されるものでもある。』
『そこで、背面側形状の差異についてみると、…この背面側形状の差異は、意匠全体から観れば、格別注意を惹く程のものにはならないと言わざるを得ず、類否判断に及ぼす影響は微弱である。』
『共通する形状については、全体の大半を占めるものであり、特に、(A)全体は、…、(B)キャビネット部の正面側を…、(C)台輪部につき、…これら(A)ないし(C)の合わせ持った形状は、全体の骨格となる統一したまとまりあるデザインの基調を成し、かつ、独自の形状を表出し、従来見られない特徴的なものであり、需要者の格別の注意を惹くものであるから、総じて、共通する形状から生じる意匠的効果は、意匠全体として両意匠に強く共通 した美感を生じさせるものである。』
『背面側形状の差異は、意匠全体から観れば、背面側だけの一部位の差異に過ぎず、格別注意を惹く程のものともならず、共通する形状が持つ統一したまとまりあるデザインの基調を変更するまでに至らず、差異点が共通点を凌駕せず、両意匠は類似するものである。』
本日は以上です!
個人的にはキャップの審決がほぉ…て感じでした。
明日は商標の新着審決のご紹介の予定。よければ見てね、そして見ていただけるんならぷちっと押してね…
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この記事を読んでひろた興味を持たれた方は…
【執筆記事】
「知財管理」誌 VOL.60 NO.6
(並行輸入と商標権侵害 -並行輸入の抗弁における「同一人性の要件」及び「品質管理性の要件」-)
「知財産管理」誌 VOL.58 NO.5
(「腸能力」審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件)
内容はこちらからどうぞ
【関係事件】
代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。
※注意!弁理士さんや知財部門のご担当など、クロートの方へ!
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