さて、続きのNo.2です。実は、既に“新着”とは言いがたい審決なんですが、そのゆるさが商標亭ぽいということで、笑って許してください。そのかわりと言ってはなんですが、選りすぐってみました(独断と偏見で…)
■■■商標新着審決【4条1項11号・10号・15号・8条、判定系】
●不服2009-17019
本願商標
指定商品:第30類「即席中華そばのめん,即席春雨」
「北海道味物語」
引用商標
指定商品:第29類及び第30類に属する商品
「味ものがたり」
本願商標(商願2008-86814)は引用商標(登録第4730292号)と非類似と判断されました。
*称呼・外観・観念の認定・類否: 『本願商標は、…、同書、同大、等間隔に外観上一体的に表してなるものであり、その構成文字全体から生じる「ホッカイドウアジモノガタリ」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものである。
そして、本願商標は、構成全体として、「北海道の味についての物語」ほどの観念を生じさせるものであり、「北海道」の文字部分が、地名の意味を有するとしても、これに接する取引者、需要者は、殊更「北海道」の文字を捨象し、「味物語」の文字部分のみをもって、取引に資するものとは言い難く、かかる構成においては「味物語」の文字部分のみが独立して自他商品の識別標識として機能を果たすというよりは、むしろ構成全体をもって一体不可分のものと認識し、把握されるとみるのが相当である。
そうとすると、本願商標は、その構成文字に相応して、「ホッカイドウアジモノガタリ」の一連の称呼及び「北海道の味についての物語」の観念のみを生じるものといわなければならない。』
●不服2009-17033
本願商標
指定商品:第29類「食肉,肉製品」
本願商標(商願2009- 307)は引用商標(登録第4671735号)と類似と判断されました。
*称呼・外観・観念の認定・類否: 『本願商標は、…、該文字は「(ホウジュとも)宝物とすべきたま。たからのたま。」(株式会社岩波書店発行 広辞苑第六版)を意味する語であり、これより「ホウシュ」及び「ホウジュ」の称呼を生じ、「宝物とすべきたま、たからのたま」の観念を生じるものである。
一方、引用商標は、…、これより「ホウジュ」の称呼を生じるものであり、特定の語義を有しない造語と認められるものである。
そうすると、本願商標と引用商標とは、「ホウジュ」の称呼を共通にする商標であり、引用商標は特定の語義を有しない造語と認められるため観念においては比較することができないものであって、外観において相違するものであるが、これらが称呼の共通性を凌駕するほど著しいものとはいえず、両者は互いに相紛れるおそれのある類似の商標というのが相当である。』
*取引実情: 『本願の指定商品を取り扱う分野において、商標の称呼よりも、むしろ外観や観念を重視して取引される特殊事情があるものとも認められず、簡易、迅速を尊ぶ取引の実際においては、電話を用いた口頭による取引を行う場合も少なくないので、取引者、需要者が商標の称呼を頼りに商品を特定することも普通に行われているものであり、本願商標と引用商標とが外観上相違することにより、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがないということはできない。
よって、本願商標と引用商標は、その指定商品が、引用商標の指定商品中に同一の商品を包含し、また、称呼が同一であり、観念については比較することができず、外観が相違するものであるが両商標は共に漢字2文字からなる態様であることも併せ考慮すると、取引者・需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に判断すれば、商品の出所について誤認混同が生ずるおそれがあるものと判断するのが相当である』
●不服2009-15529
本願商標
指定商品:第10類「血液診断用機械器具,血液検査用機械器具,血圧監視・計測装置,血栓形成観察機械器具,血栓成長測定装置」、第44類に属する役務
「T-TAS」
引用商標1
指定商品:第10類「歯科用機械器具」
「TAS\タス」
引用商標2
指定商品:第5類に属する商品
「テイタス」
本願商標(商願2008-76351)は引用商標1、2(登録第4769528号、登録第5007576号)と非類似と判断されました。
*称呼・外観・観念の認定・類否: 『本願商標は、…、これらは同一の書体、同一の大きさで外観上まとまりよく一体的に表されており、また、構成文字全体より生じると認められる「ティーティーエイエス」又は「ティータス」の称呼も格別冗長というべきものではなく、よどみなく一連に称呼し得るものであるから、たとえ、ローマ字の1字が商品の規格、品番等を表す記号・符号として一般的に使用される場合があるとしても、かかる構成にあっては、本願商標に接する取引者、需要者をして、殊更に前半部分の「T」の文字部分を省略して、後半部分の「TAS」の文字部分のみに着目し、当該文字部分より生ずる称呼をもって取引に当たるというよりも、むしろ、その構成全体をもって一体不可分のものと認識、把握し、商取引に当たるものとみるのが自然である。』
『本願商標と引用商標1とは、称呼において、その構成音、音数が相違し明らかに聴別し得るものである。』
『本願商標と引用商標2とは、まず、本願商標より生ずる「ティーティーエイエス」の称呼と引用商標2より生ずる「テイタス」の称呼は、称呼において、その構成音、音数が相違し明らかに聴別し得るものである。
次に、本願商標より生ずる「ティータス」の称呼と引用商標2より生ずる「テイタス」の称呼とを比較すると、称呼の識別上重要である語頭において、「ティー」と「テイ」の音の差異を有するところ、前者は「ティ」の母音(i)が、直後の長音とつながって伸びるように発音されるのに対し、後者は「テ」及び「イ」が、はっきりと発音され、さらに、「イ」の母音(i)が、つまったように発音されるから、これらの差異が称呼全体に与える影響は大きく、それぞれを一連に称呼した場合は、その語調、語感が相違し聞き誤るおそれはないというべきでる。』
●判定2010-600005
本件商標
指定商品:「あんか,かいろ,かいろ灰,湯たんぽ,化学物質を充てんした保温保冷具」を含む第11類他、第4類、第5類、第6類、第8類、第14類、第16類、 第18類、第20類、第21類及び第24類に属する商品
「ペチカ」
イ号標章は本件商標(登録第1036120号)の商標権効力範囲に属しないと判断されました。
*商品の類否: 『イ号標章を使用する商品は、発砲ビーズやウレタンフォームの保温性に着目し、その断熱、保温力により、足を温かく保つ商品であり、引用商品1は、火やお湯等の発熱効果を利用し、また、引用商品2は、化学反応による発熱効果を利用して、その発熱により、体を温める等の商品であり、その、発熱(保温)の方法、原材料が相違するものである。
イ号標章を使用する商品は、その構造において商品自体には発熱体を有していない点において、引用商品1及び引用商品2とは大きく異なっており、また、引用商品1及び引用商品2のように商品自体が発熱し体を温める効果を有する商品は、その発熱体及びそれを利用した商品の安全性などにおいて専門性を必要とするものといえるから、これらの事情を総合的に判断すると、イ号標章を使用する商品と引用商品1及び引用商品2とは、原材料、品質、生産者を異にし、販売場所も一致するとはいい難い商品といわざるを得ない。』
本日は以上です!
来週も見ていただけるのならぷちっと押してくださいね…
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※左上の画像データは名古屋市さんのご好意により提供していただきました。
この記事を読んでひろた興味を持たれた方は…
【執筆記事】
「知財管理」誌 VOL.60 NO.6
(並行輸入と商標権侵害 -並行輸入の抗弁における「同一人性の要件」及び「品質管理性の要件」-)
「知財産管理」誌 VOL.58 NO.5
(「腸能力」審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件)
内容はこちらからどうぞ
【関係事件】
代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。
【ZIP FM Z-TIME BIZ】
ここのフォトギャラリーになぜかわたくしが。
見付からないよ~?→2008/07/23のところ…
※注意!弁理士さんや知財部門のご担当など、クロートの方へ!
このブログでは、わかりやすくするために、正確でない表現を使ったり、はしょったり、大雑把にしてたり、…等々してますが、目くじら立てずに見逃して下さい<( )>
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