黒糖ドーナツ vs. 棒でドーナツ

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<平成22年(ワ)第3490号 商標権に基づく差止請求権不存在確認等請求本訴事件,
  同年(ワ)第10157号 商標権侵害行為差止請求反訴事件>(判決文はこちら

 本日は、黒糖ドーナツ棒商標権侵害訴訟の大阪地裁判決をご紹介いたします(以前、審決取消請求事件をご紹介したドーナツ棒の件です)。
 ネットで検索すると、どうやら最近、ドーナツ棒が話題になっていたようなんですが、知らんかったのは自分だけ?自宅にテレビがないので、リアル(=“ネットでない”の意)のトレンドがよくわからんです…

■事件の概要

2005. 1  F社さん(反訴原告)出願
2005.11  3条1項3号&4条1項16号で拒絶査定
2006. 1  拒査不服審判請求
2007. 7  3条2項適用が認められて登録審決
          ※F社さんの本件商標
                          
2009.11  F社さんが、N社さん(反訴被告)を相手に、仮処分命令申立・判定請求。 また、N社さんの取引先に、仮処分命令申立た旨等告知&警告書送付。
           ※N社さんの使用標章(反訴被告標章1)は、下記ブログの2つ目の写真の標章でしょうか? リンク張らせていただきます…
              『漂白の日々 2010.12.22記事「食べ比べ 黒糖棒ドーナツVS棒でドーナツ」』              
2010. 2  本件商標の登録につきN社さんが無効審判請求
2010. 5  判定請求不成立決定(イ号標章は本件商標の商標権効力範囲に属しない)
           ※本件商標は3条2項適用で登録されたので、構成全体をもって識別性を生じているものと判断
2010.10  無効審判請求棄却審決
2010.11  N社さんが審決取消訴訟を提訴
2011. 1  F社さんが仮処分命令申立取下げ
2011. 3  審決取消訴訟判決(→以前のエントリをご覧ください)

■争点(反訴はF社さんが原告、本訴はN社さんが原告です)

(1) 商標権侵害の成否(反訴請求)
  ア 反訴被告標章1が本件商標と類似するか。
  イ 反訴被告標章1は商標法26条1項2号所定の商標に該当するか。
  ウ 本件商標は商標登録無効審判により無効とされるべきものと認められるか。
(2) 不正競争防止法2条1項1号該当性の有無(反訴請求)
  ア 反訴原告商品の商品自体の形態,小包装の商品形態,標章が,それぞれ周知商品等表示(不正競争防止法2条1項1号)に該当するか。
  イ 反訴被告商品の商品自体の形態,小包装の商品形態,標章が,それぞれ反訴原告商品のものと類似するか。
(3) 一般不法行為の成否(反訴請求)
  反訴被告による反訴被告商品の製造販売が,反訴原告との関係で不法行為を構成するか。
(4) 反訴原告の損害額(反訴請求)
(5) 不正競争防止法2条1項14号の不正競争該当性の有無(本訴請求)
  反訴原告による上記1(6)の告知・流布行為が,「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し,又は流布する行為」(不正競争防止法2条1項14号)に該当するか。

■裁判所の判断
 
 上記各争点に対する判断のうち、いくつかピックアップします。

(1) ア 反訴被告標章1が本件商標と類似するか(判決文23~28頁)
  類似性に関する裁判所の結論は、以下の通りです。
  『本件商標と反訴被告標章1は,いずれも「黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子」との観念を生じる点で,観念において同一と認められるが,その観念は「黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子」で指定商品ないし反訴被告商品1そのものを想起させるものであり,それ以上の何らかの意味を有するものでもないことから,これをもって本件商標と反訴被告標章1の類似性を根拠づける事由とするのは相当ではなく,それよりも本件商標と反訴被告標章1は,その外観及び称呼によって明確に区別できることからすると,本件商標と反訴被告標章1は,類似しないものと判断するのが相当であるといわなければならない。』(判決文26~27頁)

  なお、F社さん(反訴原告)は、取引実情につき、需要者(子供や年配者)や嗜好品であることを指摘して、あんまじっくり観察しないから類似といえるんじゃないの的な主張をされていましたが、裁判所は以下のように述べました(判決文27頁)。
 『需要者が子供や年配者である旨の立証はなく,仮に,需要者に子供や年配者が多いとしても,本件商標と反訴被告標章1の外観及び称呼の違いが,これらの需要者にとって理解が困難なものであるとは考えられないし,また,嗜好品ゆえに誤認混同が生じる旨についても特段の立証はなく,逆に菓子類という嗜好品であるからこそ,子供や年配者であっても商品を正しく選択する場合もあり得るところである。
 したがって,仮に子供や年配者が需要者であるとするのが取引の実情であるとしても,外観及び称呼によって明確に区別され得る本件商標と反訴被告標章1のそれぞれ付された商品の出所について誤認混同のおそれがあるとは認められない。

 以上より、争点(1)の商標権侵害を理由とする請求は、認められませんでした。

(2) 不正競争防止法2条1項1号該当性の有無(判決文28~34頁)
 F社さん(反訴原告)の反訴原告標1は、先ほどのブログの1つ目の写真の標章でしょうか?
              『漂白の日々 2010.12.22記事「食べ比べ 黒糖棒ドーナツVS棒でドーナツ」』    
 
 F社さんの商品自体の形態・小包装の形態については周知商品等表示に該当しないと判断され、反訴原告標章1だけ周知性が認められましたが(判決文29~33頁)、N社さんの反訴被告標章1との類似性は認められませんでした(判決文33~34頁)。
 したがって、結局、争点(2)の不競法2条1項1号に基づく請求は、認められませんでした。

(3) 一般不法行為の成否
 F社さん(反訴原告)は、N社さんの行為は『反訴原告が長年にわたって築いてきた信用にフリーライドするものであって,不法行為が成立する』と主張されておられました。
 これに対し、裁判所は、以下のように判示しました。
 『反訴被告の行為が不正競争防止法2条1項1号の不正競争に該当しないことは既に判示したとおりであるから,反訴被告は,取引者,需要者にとって反訴原告商品とは識別し得る反訴被告商品をもって反訴原告と競業しているということができるし,また反訴原告が黒糖を原材料に用いた棒状形のドーナツを新規に開発した者であったとしても,反訴原告に,そのような商品の種類そのものを独占する法的地位ないし利益が当然に与えられるわけではないから,反訴被告が,反訴原告商品を参考にして同種商品を製造販売して競業することが,フリーライドであるなどとして非難されるべき理由はない。
 そもそも反訴被告が反訴原告と同種の商品をもって同じ地域の市場に参入することによって反訴原告の売上げが減少する結果が生じていたとしても,それが市場において許された自由競争の結果であるなら,その結果をもって反訴被告の行為を違法ということはできない。
』(判決文34~35頁)

 結局、争点(3)の不法行為に基づく請求も、認められませんでした。

(5) 不正競争防止法2条1項14号の不正競争該当性の有無(判決文35~36頁)
 F社さん(反訴原告)が、N社さんの取引先に対し、N社さんの行為が、本件商標権を侵害し、不競法2条1項1号・2号に該当する旨記載した警告書を送付したことは、概要で述べた通りです。
 しかしながら、N社さんの行為は、本件商標権を侵害するものでもなく、不競法2条1項1号にも該当しないと判断されました。このことから、裁判所は、以下のように判示しました。
 『…また,反訴原告と反訴被告が競争関係にあることからすると,上記警告書の送付行為のうち,本件商標権を侵害し,同号に該当する旨記載した部分に関するものは,同項14号の,「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し,又は流布する行為」に該当する。また,弁論の全趣旨に照らし,反訴原告が,今後上記行為に及ぶおそれが認められる
』(判決文35頁)
 『したがって,反訴被告の不正競争防止法3条,2条1項14号に基づく差止請求は,反訴原告に対し,本件商標権を侵害し,不正競争防止法2条1項1号に該当する旨の告知又は流布の差止めを求める部分については理由がある…』(判決文36頁)
 
■コメント
 
 F社さんの反訴請求は全て認められなかった一方、N社さんの不競法2-1-14に基づく差止請求については一部認められたという結果になりました。
 ただ、冒頭で触れたように、F社さんはスポーツチームのスポンサーになって、上手く話題性を作っておられるようですので、これぞ自由競争といえるのではないでしょうか。
 
本日は以上です!次回も新判決のご紹介。次回も見ていただけるならぷちっと押してくださいな(。-_-。)/
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※左上の画像データは名古屋市さんのご好意により提供していただきました。

この記事を読んでひろた興味を持たれた方は…

【執筆記事】
  
「知財管理」誌 VOL.60  NO.6
  (並行輸入と商標権侵害 -並行輸入の抗弁における「同一人性の要件」及び「品質管理性の要件」-)

  「知財産管理」誌 VOL.58 NO.5
  (「腸能力」審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件)
 
  「パテント」誌  2011.2 Vol.64
   (部分意匠に関する判例研究 -類否判断を中心に- 包装用容器事件)
  字数制限が厳しかったので尻切れトンボ気味ですが…

 【関係事件】
 代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
 
平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
 なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。

【ZIP FM Z-TIME BIZ】
 2008/07/23 商標の話題で出演
 
※注意!弁理士さんや知財部門のご担当など、クロートの方へ!
  このブログでは、わかりやすくするために、正確でない表現を使ったり、はしょったり、大雑把にしてたり、…等々してますが、目くじら立てずに見逃して下さい<(   )>
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