同一出願人・同一商標・指定商品の一部が重複する出願

毎年忘年会シーズンまっただ中に健康診断があり多少数値が悪くてもそのせいだとたかをくくって要精密検査でも数年すっぽかしているひろたです、皆さまいかがお過ごしでしょうか。そろそろしっぺ返しがくる年齢ですので、今年の診断結果で要精密検査となったら諦めて行こうと思います。

そんな師走の中、ちょっとおもしろい審決を見つけましたので、ご紹介いたします。内容はタイトルのとおりで「同一出願人・同一商標・指定商品の一部が重複する出願」のケースです。

不服2013-3941

問題となった既登録商標と本願は、出願人も商標も同一ですが、指定商品については、本願商標の指定商品中の一部が、既登録商標の指定商品の一部と同一という関係です。

審査段階では、
本願商標は、出願人の出願に係る登録第5520513号商標(以下「既登録商標」という。)と同一であり、かつ、その指定商品も同一のものを含むものであるから、本願を当該同一の指定商品について更に登録することは商標法制定の趣旨に反するものと認める。
という理由で拒絶査定を受けました。

それを不服として出願人さんが審判を請求したのがこの事件です。

ところで、商標審査基準「第18その他」6.には、
同一人が同一の商標について同一の商品又は役務を指定して重複して出願したときは、第68条の10の規定に該当する場合を除き、原則として、先願に係る商標が登録された後、後願について『商標法制定の趣旨に反する。』との理由により、拒絶をするものとする。商標権者が登録商標と同一の商標について同一の商品又は役務を指定して登録出願したときも、同様とする。
と規定されとります。

拒絶査定は、この基準に沿ったものと思われます。

では、審決での判断はどうだったのでしょうか。以下、審決から一部抜粋します。
(2)ところで、業として商品及び役務(以下「商品等」という。)を取り扱う者(以下「企業等」という。)は、技術の発展、需要者のライフスタイルの変化等に応じて、それまでその企業等が扱ってこなかった商品等を開発、販売することがあり、特に近時の産業の発達により、そのようなケースが多く存在するところである。
 そして、前記のケースにおいて、企業等は、新たな商品等について既存の商品等に使用する商標と同一の商標を使用する場合には、当該商標について新たに使用する商品等に更に商標登録を受けることが必要となり、この場合、その出願人(企業等)の多くは、その商品等の属する分野に既に商標登録を得ている場合が多いから、企業等は、前記のような新商品等を販売するにあたり、それらが商品化される毎に、その商品等が属する区分について、既存の商標登録とは別に商標登録を受けなければならないということになる。
 また、その既存の商標登録の指定商品及び指定役務(以下「指定商品等」という。)が包括的な表示で登録を受けていた場合であっても、新たに商品化した商品等が、その既登録商標の指定商品等の表示の範ちゅうの商品等であるかが明確でない場合も少なくないから、このような観点から、既に当該区分に商標登録を得ていた場合であっても、企業等は、新たに商品化した商品等であることを明確にして、商標登録を受ける必要がある。
 このような場合に、既存の商標登録と指定商品等が重複する商標を登録することができないとしたならば、企業等は、その商標及び指定商品等についての登録が必要な限り、半永久的に同一区分に複数の商標権を所有していくことになり、それらの商標権の存続期間の更新登録を行うには、当該商品及び役務の区分の商標登録が一つの場合に比べて、多額の更新登録料が課されることとなる。
 また、新たな商品等を含めて商品等を指定し直し、同一区分の商標を一つにしていくためには、既存の登録商標を放棄するなどして消滅させ、それにより、権利が重複することなく商標登録を受けることは可能であるが、その場合は、当該商標に係る商標権に空白を生じ、不安定なものとなる。
 なお、仮に、同一商標について同一区分に指定商品等を重複して登録を受けたとしても、更新時には、それらの商標権のすべてを更新する必要性はないから、多くの場合は、将来的には、二重及びそれ以上の商標登録状態が解消されることが十分に考えられる。
 このように考えるならば、新たな商標登録出願の指定商品等のすべてが、既存の商標登録の指定商品等と明らかに同一の場合やその範ちゅうに含まれる場合はともかく、指定商品等の一部が重複しているとしても、既存の商標登録の指定商品等には含まれない新たな商品等を指定商品等として出願された場合には、その商標登録出願について、「商標法制定の趣旨に反する」として拒絶すべきではなく、商標審査基準「第18その他」6.に定める規定の例外として、取り扱うべきであると考えられる
 これを、本件についてみると、本願商標と既登録商標は、その商標の構成態様は同一であるものの、本願商標の第9類の指定商品には、既登録商標の指定商品以外の商品を加えて指定されているものである。
 そうとすると、本願商標については、前記商標審査基準の例外としてみるべきであり、「商標法制定の趣旨に反する」として、拒絶することはできない。』(下線は私が付しました)

 おお、審査基準の規定の例外として取り扱うべきって… とても user-friendly な審決です!

 同じような審決は過去にあったのでしょうか?知識の乏しいわたくしにとっては新鮮でした。

次回も見ていただけるならぽちっと押してくださいな(。-_-。)/
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