廣田は 2019年度 中部経済産業局主催の「デザイン経営」に関する調査事業のワーキンググループのメンバーとして、ディスカッションや提言等させていただきました。
この事業の成果は、おそらく、来年度以降にまとまり次第、リリースされるものと思います。
さて、本日(2020年3月23日)、特許庁から、新たに、「デザイン経営」に関するプレスリリースがありました。
リストされた資料のうち「デザインにぴんとこないビジネスパーソンのための“デザイン経営”ハンドブック」の中では、「デザイン思考(DESIGN THINKING)」の提言者であるIDEOのパートナーのインタビューも掲載されていて、必読です。
そんなわけで、今回は、「デザイン思考(DESIGN THINKING)」での「アジャイル(AGILE)」型開発と、知財との関係について、書いてみたいと思います。
(※ちなみに、「デザイン思考(DESIGN THINKING)」や「デザイン・ドリブン・イノベーション」が中小企業さん向きだ~という話は、こちら
「中小企業さん向き?デザイン思考」http://aigipat.com/tm/?p=4743
「こちらも中小企業さん向き?デザイン思考の一歩先をいくデザイン・ドリブン・イノベーション」http://aigipat.com/tm/?p=4771)
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「デザイン思考(DESIGN THINKING)」での開発は、まず基礎となるアイデアを練り上げ、アイデアが仮説的にまとまった段階で、最低限の機能に絞ったプロトタイプで「リーンスタートアップ(LEAN STARTUP)」し、「アジャイル(AGILE)」型開発で「実装→テスト」を繰り返しながら迅速・柔軟に進めて改善していきます。
つまり、最初から完成形を決め打ちしない のがデザイン思考での開発のキモなわけですが…
知財的には結構やっかいかもしれません。
1.調査が大変~
開発の際は他社の知財の権利侵害とならないよう調査を行うことが一般的だと思います。
アジャイル型開発だと、中間段階では最終形が見えず調査に取り掛かりづらい一方、とりあえずの最終形が決まってからリリースまでの期間が短く短期間で調査を終えなきゃいけないことが多いと思います。時間との闘いですね。
また、リリース(上市)してユーザーを巻き込んで行うアジャイル型開発だと、リリース前にその都度調査を行わないとかん?都度都度真面目にやろうとすると、労力がめちゃかかりがち。
調査のタイミングや範囲をどうするか、結構悩みますね…
2.出願にまあまあの工夫が必要~
“最初から完成形を決め打ちしない”ことは、権利取得の面では、知財がわりと不得意とするところです(汗
なぜかというと…
特許や意匠は、権利取得するために新規性が必要で、原則として、リリース前(世に公開する前)に出願しとく必要があります。
(※最初の公開から1年以内なら「新規性喪失の例外」という制度を適用することができますが、あくまで自己の公開に対する救済措置であり、他人が同じようなものを公開したらアウトなので、原則に従った方が安全)
でも、出願した後に「実装→テスト」でプロダクト等の仕様が変更された場合は、仕様変更に合わせて出願の内容も変更したくなりますよね。
しかし、出願の内容を変更(「補正」といいます)できる範囲は、最初の出願の範囲(明細書や図面等に記載された範囲)とされていて、後から新しい事項(「新規事項」といいます)を追加することはできません。
なお、特許出願の内容は文字で書かれたアイデアが主体で、補正も文字で行うことが殆どでなのでそれなりに柔軟にできますが、意匠出願の内容は図面で表されたデザインが主体で、補正は出願したデザインと同一性が保たれる範囲とされているのでかなりガチガチ限定的です(というか、デザイン変更はほぼ不可能)。
公開前に出願しなかんって急がされるのに、後から変更がしにくいって~
「アジャイル」型開発には、なんだか使いにくいですね…汗
それでも、工夫次第では、「アジャイル」にかなり追随して保護できる方策を取ることも、できないことはないと思います。
(1)新関連意匠制度の活用
その方策の1つとして、改正意匠法での関連意匠制度を上手く活用することが挙げられます。
そもそも今回の意匠法改正は、デザイン思考を意識した「デザイン経営宣言」がトリガーだったようですので、「アジャイル」に追随しやすいように改正されているはず?
いままで登録できなかった”関連意匠にのみ類似する意匠”(いわゆる団子3兄弟型)が、改正で登録できるようになったことは、旧法に比べるとドラスティックに改善された点です。
これを”上手く(姑息に?)”使いこなすと、「アジャイル」に追随できるケースが増えそうです。
(ちなみに、関連意匠を出願できる期間は、基礎意匠の出願日から10年という長期になりました。)
(※意匠法改正についてのごくごく簡単な説明はここ:https://www.jpo.go.jp/news/koho/kohoshi/vol44/07_page1.html)
(2)他の知財法とのコラボ
(1)で新関連意匠制度の活用を挙げましたが、それでも、関連意匠には「本意匠に類似する」という条件の縛りがあり、分野によっては「類似」の範囲が狭く少しの変更しか認められない可能性があって、使いづらいケースもあると思います。
また、新関連意匠制度での出願パターンを細かく検討すると、「このパターンは登録できない」という困ったケースもあります。
これら問題を克服するには意匠法だけに頼っていては無理ですので、他の知財法も駆使して、個々の「アジャイル」型開発プロダクト等をできるだけ保護できるような方策を検討する必要があります。
具体的にどうするかって?
それは、弊所の「改正意匠法セミナー」にて解説予定です!(でも、コロナが落ち着いたら…)
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