「商標・意匠・不正競争判例百選」読み合わせ勉強会No.13

毎週1回『商標・意匠・不正競争判例百選(第2版) 別冊ジュリスト』の読み合わせ勉強会に参加しています。勉強会の内容を自分的に整理した覚書メモです。

 

25.トナーカートリッジ事件(H26(ワ)12570)

【テーマ】打消し表示

【メモ】

○概要
X商標が付されたままの純正トナーカートリッジの再利用リサイクル品の製造販売につき、商標権侵害が問われた。リサイクル品には製造販売業者Yの管理ナンバーラベルが添付、箱にはリサイクル品であることを想起させるマークが描かれている等。

○判決の結論
Yの商標権侵害を肯定。
・リサイクル品の本体に製造元であるYを示す記載が存在しない
・リサイクル品の本体に添付された管理ナンバーラベルだけでは不十分
・箱にも、リサイクル品がXらと無関係に製造されたことを示す打消し表示は何らない
・純正品メーカー自身がリサイクル品を販売することもあり得る

 

◆考察

●中古品

◇手を加えずにそのままの状態で転売できるもの
出所表示機能・品質保証機能といった商標の機能を害するケースは多くないと思われる=商標権侵害となるケースは多くないと思われる
ex. CD、書籍、衣服等

◇手を加えないと転売できないもの(リサイクル品、改造品)
出所表示機能・品質保証機能といった商標の機能を害すると判断されるようなケースがあり得る=商標権侵害となるケースもあり得る
・ジレットモデル型の取り換え部品 ex. トナーカートリッジ ←”打消し表示”が問題となりやすい
・完成品タイプ ex. 自動車のタイヤ、自動車

※参考:商標権の品質保証機能と並行輸入 -アメリカ商標法を素材とする比較法的考察-
p.33 に中古品に関する考察
https://system.jpaa.or.jp/patents_files_old/200511/jpaapatent200511_017-050.pdf

 

●ジレットモデル型の取り換え部品

純正品業者のビジネスモデルの要であるだけに、取り換え部品が中古品であっても新品であっても、”打消し表示””○○用”の表示が問題となりやすい。

ポイント
・商標的使用態様と判断され得るか
・出所表示機能・品質保証機能といった商標の機能を害すると判断され得るか

 

26.ピースマーク事件(H22(ワ)30827)

【テーマ】装飾的表示

【メモ】

○概要
X商標を構成の一部に有するY図柄が、商標権侵害に該当するか否かが争われた。
判決は、Yの商標権侵害を否定。

○装飾的使用と商標的使用
「商標と意匠とは排他的、択一的な関係にあるものではなく、意匠となりうる模様等であっても、それが自他識別機能を有する標章として使用されている限り、商標としての使用がなされているというべき」(ルイ・ヴィトン事件)。
その他 Heaven事件、BELLO事件参照。

○表現物の一部を構成する標章の使用
・標章が標章的使用に該当するか否かの判断手法は、標章が単独で使用されている場合と原則として変わるものではない
・結合商標において、構成要素の一つが独立して商標として機能しうるかの判断と同様の検討が必要

○商標的使用の判断における考慮ファクター
・商標の周知性/識別力の小ささ
・標章の図柄中の表示位置・態様(本件では、背景の一部として模様的に描かれている)
・標章に対する需要者の認識(本件では、「平和」の象徴として一般的に広く認識されている)
・標章に関する背景・取引実情(本件では、「平和」を表現するために背景模様として用いられたと認識される)
・使用商品についての商標の一般的表示位置
・使用商品に表示されている他の商標の有無(本件では、他に識別力が強い標章が前面に描かれている)

 

Mocco さんの資料がとてもわかりやすいので、許可を得て掲載させていただきます。

http://cello-ko.ciao.jp/20201211_presentation.pdf

20201211_presentation

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