ベガス第2事件 で詠む

ベガス第2事件(令和2年(行ケ)第10091号 審決取消請求事件 不使用取消審決取消請求事件)

 

略称の チラシ見つけた ようやった

【解説】

登録商標「ベガス」が不使用か否かが争われた事件です。ちなみに、「ベガス」は、パチンコホール名「ベガスベガス」の略称です。

この事件には前訴があります。
最初の不使用取消審判では、使用証拠として折込チラシ1, 2が提出され、登録を維持する審決が出されました。なので、審判請求人さんが審決取消訴訟を提起しました(前訴)。折込チラシ1, 2は、いずれも「ベガスベガス」「VEGAS VEGAS」との表示しかなかったため、訴訟では同一性が認められずに認容判決が出て、差戻審判で登録取消しの審決が出ました。

本事件は、その差戻審決に対し、商標権者さんが提起した審決取消訴訟です。
差戻審判では、折込チラシ3, 4を提出しました。折込チラシ3, 4では略称「ベガス」が表示されていますが、特許庁は「ベガスベガス」の文字が大きく付されているので、こちらが出所表示と認識されると判断し、登録取消審決を出したわけです。

折込チラシ3, 4

  

これに対し、裁判所は、略称の店舗名が実際に存在しないことは、その略称が他の部分から分離観察されない理由にならないよね、また、広告ではブランドの正式名称と略称が両方とも記載されることは取引上普通にあるよね、だので「ベガス北山台店」の「ベガス」も出所識別標識として機能してるよね、ということで使用を認めました。

この2枚のチラシで助かりましたね…!
ブランド名の略称で商標登録したら、略称でも使いましょう~という教訓になる事件でした。

 

判決 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/008/090008_hanrei.pdf

判決日 事件番号 条文 本件商標 指定商品役務 結論 使用商標 使用商品役務
2021/2/3 令和2年(行ケ)第10091号 50(1) 41類「娯楽施設の提供」等 登録維持 本件折込チラシ3の一部

本件折込チラシ4の一部

パチンコホール
事実の概要(抜粋・簡略)
前訴判決の理由の要旨は,①第1次審決は,原告の…本件折込チラシ1…記載の「ベガス発寒店ファンのお客様へ」の部分に使用された「ベガス」の文字部分が出所識別機能を果たし得るものと認定した上,本件折込チラシ1に本件商標と社会通念上同一と認められる商標が付されていると認定したが,上記文字部分は,店内改装のため一時休業する店舗の名称を一部省略した略称を表示したものにすぎず,本件折込チラシ1に係る娯楽施設の提供という役務の出所自体を示すものではないと理解するのが自然であるから,本件折込チラシ1に上記文字部分を付する行為は,本件商標について商標法2条3項にいう「使用」をするものであると認めることはできない,②原告の…本件折込チラシ2に本件商標と社会通念上同一と認められる商標が付されていると認定した第1次審決の判断には誤りがある,③したがって,…本件審判の請求に係る指定役務について本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していることを証明したものと認められるとした第1次審決の判断に誤りがあるというものである。
特許庁は,前訴判決の確定を受けて,…審理を再開し,…「本件商標の指定役務中,第41類「娯楽施設の提供」についての商標登録を取り消す。」との審決をし,その謄本は,…原告に送達された。
判決(抜粋・簡略)
○本件折込チラシ3について
…,「ベガス北仙台店」の標章の構成中,「ベガス」の文字部分は,それ自体が「ラスベガス」を想起させる造語であるものと認められ,また,本件折込チラシ3の表面及び裏面に「ベガスベガス北仙台店」の文字が表示されていることからすると,本件折込チラシ3に接した需要者は,「ベガス」の文字部分は,「ベガスベガス」の略称としての意味合いも有するものと認識すると認められる。
一方で,「ベガス北仙台店」の標章の構成中の「北仙台店」の文字部分は,「北仙台」の地域にある店舗の意味合いを有し,単に,上記役務の提供の場所を表示するものと認識され,役務の出所識別標識としての機能があるものとはいえないことからすると,「ベガス北仙台店」の標章の構成中の「ベガス」の文字部分は,その文字部分のみから役務の出所識別標識としての機能を有するものと認められるから,要部に相当するものである。
そこで,「ベガス北仙台店」の標章中の「ベガス」の文字部分と別紙1記載の「ベガス」の片仮名を横書きに書してなる本件商標とを対比すると,両者は,字体の違いはあるが,構成する文字が同一であり,「ベガス」という同一の称呼が生じること,「ラスベガス」を想起させる点において観念が共通することからすると,「ベガス北仙台店」の標章は,本件商標と社会通念上同一の商標であると認められる。
○本件折込チラシ4について
…,「ベガス北仙台店」の標章の構成中,「ベガス」の文字部分は,それ自体が「ラスベガス」を想起させる造語であるものと認められ,また,本件折込チラシ4の下側において,「ベガスベガスⓇ」の文字が大きく記載され,その右側には,「VEGAS VEGAS」,「北仙台店」の文字が,さらに,その右側には,「ベガスベガス北仙台店店舗マップ」が記載されていることからすると,本件折込チラシ4に接した需要者は,「ベガス」の文字部分は,「ベガスベガス」の略称としての意味合いも有するものと認識すると認められる。
一方で,前記-2 イ(ア)と同様の理由により,「ベガス北仙台店」の標章の構成中の「ベガス」の文字部分は,その文字部分のみから役務の出所識別標識としての機能を有するものと認められるから,要部に相当するものであり,「ベガス北仙台店」の標章は,本件商標と社会通念上同一の商標であると認められる。
○被告の主張について
①…,本件折込チラシ3の裏面の二重の円の中に記載された「ベガス北仙台店」の文字を本件折込チラシ3の他の記載部分から分離して観察することができるかどうかは,その文字の大きさ,間隔,配置,色彩等の態様に照らして外形的に把握すべき事柄であることからすると,原告の「北仙台店」の店舗の名称は,「ベガスベガス北仙台店」であって,「ベガス北仙台店」という名称の店舗は存在せず,「ベガス北仙台店」は「ベガスベガス北仙台店」の略称であることや「ベガス北仙台店」の文字に含まれる「ベガス」の文字は,「ベガスベガス」の略称として理解されることは,…,「ベガス北仙台店」の文字を本件折込チラシ3の他の記載部分から分離して観察することができることを否定すべき理由になるものとは認められない。本件折込チラシ4の「ベガス北仙台店」の文字についても,…,これと同様である。
また,一つの広告に特定のブランド名の商標とそのブランド名の略称の商標が記載されることは,取引上普通に行われており…,そのいずれもが同一の事業者の出所識別標識として認識され得ることは,特段不自然ではないから,本件折込チラシ3に「ベガスベガス北仙台店」の標章の記載があり,これが出所識別標識としての機能を果たし得ることは,「ベガスベガス北仙台店」又は「ベガスベガス」の略称としての「ベガス北仙台店」の標章又はこれに含まれる「ベガス」の文字部分が出所識別標識としての機能を果たし得ることを打ち消し,又は否定すべき理由になるものとは認められない

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