1.RC TAVERN事件(H24(行ケ)10019)
【テーマ】
使用意思(3条1項柱書)
【1周目メモ】
○悪意の出願への対応の一手段
本件は、特許庁の「日本における悪意の商標出願事例」にも収録。https://www.jpo.go.jp/news/kokusai/tm5/document/bad_faith_seminar3/jpo.pdf
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この資料では、特許庁の考える『日本の「悪意の商標出願」への対応の考え方』がわかりやすくコンパクトにまとめられているので参考になる(p.25)。下記3条1項柱書の意義参照。
○3条1項柱書の意義
3条1項柱書の意義については、下記の判例で示されている。
「ひかり司法書士法人事件」(H22(ワ)1232)
『現行の商標法は,商標の使用を通じてそれに化体された業務上の信用が保護対象であることを前提とした上で,出願人が現に商標を使用していることを登録要件としない法制(いわゆる登録主義)を採用したものであり,商標法3条1項柱書きが,出願人において「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」であることを商標の登録要件とした趣旨は,このような法制の下において,他者からの許諾料や譲渡対価の取得のみを目的として行われる,いわゆる商標ブローカーなどによる濫用的な商標登録を排除し,登録商標制度の健全な運営を確保するという点にあるものと解される。 』
○3条1項柱書「自己の」の解釈
「ひかり司法書士法人事件」(H22(ワ)1232)
『商標法3条1項柱書きの「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」とは,出願人において自己の業務に現在使用しているもの又は近い将来において自己の業務に使用する意思があるものであることを要するが,この「自己の業務」に該当するかどうかについては,形式的に判断することは必ずしも相当ではないというべきであり,専ら他者に使用させることを目的とする商標の登録出願であっても,出願人と当該商標を使用する他者の業務との間に密接な関係があって,出願人に当該商標の商標登録を認めることに社会的,経済的にみて合理的な必要性が認められる事情があり,濫用的な商標登録を排除するという法の趣旨にも反せず,かつ,当該商標を使用する役務に係る業務を行うことができる者が他の法令上制限されているときはその制限の趣旨にも反しないと認められる場合には,当該他者の業務を当該出願人の「自己の業務」と同視し,当該出願人において当該商標が「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」に当たると評価することができるものと解するのが相当である。 』
2.ワイキキ事件(S53(行ツ)129)
【テーマ】
産地・販売地表示(3条1項3号)
【1周目メモ】
○判決文抜粋
『このような商標は、商品の産地、販売地その他の特性を表示記述する標章であつて、取引に際し必要適
切な表示としてなんぴともその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であつて、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解すべきである。叙上のような商標を商品について使用すると、その商品の産地、販売地その他の特性について誤認を生じさせることが少なくないとしても、このことは、このような商標が商標法四条一項一六号に該当するかどうかの問題であつて、同法三条一項三号にかかわる問題ではないといわなければならない。そうすると、右三号にいう「その商品の産地、販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」の意義を、所論のように、その商品の産地、販売地として広く知られたものを普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであつて、これを商品に使用した場合その産地、販売地につき誤認を生じさせるおそれのある商標に限るもの、と解さなければならない理由はない。』
※参考 原審:S52年(行ケ)184
「ワイキキ」は、本件商標の登録された昭利四五年四月当時すでに、「ワイキキ海岸」及びこれに隣接した繁華街を含む観光地域の総称としてわが国においても著名であつたというべきであり、しかも、同地における代表的土産品の一が花香水であつた以上、「ワイキキ」の文字からなる本件商標をその指定商品中香水等の化粧品に使用した場合には、一般の需要者をして、その商品が「ワイキキ」で生産販売された土産品であるかのように誤認させるものがあり、また、その他の指定商品について使用した場合にも、その商品が観光地「ワイキキ」で生産販売される商品であるかのように誤認させるものがあるといわざるをえない。』
○当時の使用状況
「ワイキキ」は当時観光地の名称としても著名であり、実際に、指定商品の産地・販売地であった。
しかし、”産地・販売地として広く知られて”いたかどうかは不明。
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『その商品の産地、販売地として広く知られた…商標に限るもの、と解さなければならい理由はない。』
独占適応性欠如の面が大きい?
○審査基準
2.商品の「産地」、「販売地」、役務の「提供の場所」について
(1) 商標が、国内外の地理的名称(国家、旧国家、首都、地方、行政区画(都道府県、市町村、特別区等)、州、州都、郡、省、省都、旧国、旧地域、繁華街、観光地(その所在地又は周辺地域を含む。)、湖沼、山岳、河川、公園等を表す名称又はそれらを表す地図)からなる場合、取引者又は需要者が、その地理的名称の表示する土地において、指定商品が生産され若しくは販売され又は指定役務が提供されているであろうと一般に認識するときは、商品の「産地」若しくは「販売地」又は役務の「提供の場所」に該当すると判断する。
(2) 商標が、国家名(国家名の略称、現存する国の旧国家名を含む。)、その他著名な国内外の地理的名称からなる場合は、商品の「産地」若しくは「販売地」又は役務の「提供の場所」に該当すると判断する。
○実際の審査では…?
(東京の審査官が)地名とわからない地名は登録になっている例も少なくない。
例えば、中国の地方など。
次回のGEROGEA事件との関係をお楽しみに~♪
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