通信社も攻めてきた!新聞記事のイントラネットでの共有事件

著作権判例の紹介です。

東京地裁令和8年2月27日判決
令和5年(ワ)第70626号
判決文
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-95637.pdf

 

原告:一般社団法人共同通信社
被告:首都圏新都市鉄道株式会社(「つくばエクスプレス(TX)」を運営。以下、「被告」または「TX」ということがあります。)

 

つくばエクスプレスを運営する首都圏新都市鉄道(株)が、新聞社に無断で、鉄道や沿線地域等に関する新聞記事の画像データを社内イントラネットにアップロードし、従業員が閲覧できるようにしていた問題。
中日新聞社(東京新聞を発行)と日本経済新聞社が、それぞれつくばエクスプレスを著作権侵害で提訴した結果、複製権及び公衆送信権の侵害が認められ、損害賠償請求を一部認容する知財高裁の判決が出されたことは、ご存じの方も多いと思います。

 

これらの訴訟(以下、「先行訴訟」といいます)に遅れて提起された今回の訴訟。
先行訴訟の判決を見て、「その新聞記事の中に、もしやうちの記事が元になっているヤツがあるんと違う?」と考えた原告が、訴訟資料を閲覧して確認したところ、原告記事が元となっている記事を多数特定できたことから、提訴に至った、という事件です。

 

私は新聞社と通信社の関係をよく分かっていなかったんですが、今回調べてみたところ、通信社は、「ニュースの卸問屋」なんですね。

新聞社や放送局などの報道機関に記事を配信している。報道機関は、通信社からの記事を、必要に応じ、そのまま使用したり、短くするあるいは加筆したり等アレンジして紙面に掲載等している。

全国紙は、国内及び海外に自前の支局も多く持っているから、掲載する記事も独自に取材したものが多いけど、海外スポーツの記事などは、そこまで手が回らん、ということで通信社から配信された情報を利用している場合があり、(共同)とか(時事)とか、海外の通信社だと(ロイター)などとクレジットされているのを見かけますね。一方、地方紙などは、自前の支局網が限られているので、紙面を埋めるために通信社の記事を多く使用する等、通信社への依存度は高いのだとか。

 

つまり、新聞に掲載されている記事の中には、通信社から配信された記事そのものだったり、通信社の記事の翻案物、すなわち二次的著作物であるもの、がまあまああるということですね。
そしてある新聞記事が、通信社の記事の二次的著作物であった場合には、通信社は、その二次的著作物の原著作者ということになる。

 

著作権法28条                                            二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。

 

によれば、
新聞記事を無断で複製すれば、新聞記事の著作権だけでなく、その原著作物である通信社の記事の権利も侵害することになる、ということ。

 

今回、「二次的著作物の原著作者の権利」を主張できることに、原告は気が付いたというわけです。

 

この訴訟で原告は、「新聞記事(先行訴訟資料から明らかになった、TXの社内イントラネットに掲載された東京新聞と日経新聞の記事)文章」と、新聞記事の元となったと考えられる「原告文章」を左右に対比させた記事一覧表を提出したようです(判決文には添付されていなかった)。その「新聞記事文章」の数は、判決文から読み取れる限りでは、100を超えています。
それらの「新聞記事文章」の一つ一つについて、「原告文章」の複製または翻案(二次的著作物)であるか否かが、判断されました。

 

その結果、1つの記事を除いた全ての「新聞記事文章」が「原告文章」の複製物または翻案物であり、「原告の著作権(公衆送信権又は二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(公衆送信権)が侵害された」ことが認められ、
94万円ほどの請求に対し、87万円ほどの損害賠償が認められました。

 

「新聞記事を新聞社に無断で社内イントラネットに掲載して、従業員が見られるようにしていた」事件では、昨年、愛知県蒲郡市も同様の行為について、複数の新聞社及び通信社から提訴されたというニュースがありましたが、このような行為をすれば、新聞社と通信社の両方に対し二重の責めを負うこともあることは覚えておいた方がいいと思い、この事件を採り上げました。
昔、新聞記事をスクラップブックにクリッピングしていた感覚で、社内イントラネットにアップロードしてしまっているような事業所はまだまだ多いのではないかと推測されるので、この事件を教訓にしてほしいと思います。

 

この事件であれっと思ったこと:

先行訴訟を提起した新聞社は、イントラネットに上げられていた記事の中には、ほとんど通信社の記事の複製のものもあったのに、原著作者のような顔をしてTXに対し訴訟を提起していたってこと…?それってどうなの…?

<担当:上田>

 

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