このブログの6月14日のコンバース商標事件控訴審の記事でちらっと触れた「知財管理」誌の最新号の情報がアップされたようなので、宣伝を兼ねてご紹介(笑)。
知財管理 2010年6月号 VOL.60 NO.6(NO.714)
判例と実務:No.377
並行輸入と商標権侵害-並行輸入の抗弁における「同一人性の要件」及び「品質管理性の要件」-
改めて、原稿執筆をご依頼いただたいた委員の皆様に感謝するとともに、記事内容について忌憚ないご意見をいただけると大変嬉しく存じます。
なお、知的財産協会に加入したいのはヤマヤマですが、すんません、会費がちょい…(とか言ってる場合じゃないことは重々承知しておりますが…)
送っていただいた今月号の「知財管理」誌は、ありがたくじっくり読ませていただきます。
■■で、今回の知財管理誌の記事についてちょいとコメントを…。
かのフレッドペリー最高裁判決では、商標機能論をベースとし、いわゆる“真正品の並行輸入の抗弁の3要件”によって、商標権侵害となるか否かが判断されました。
3要件のうち、特に「同一人性の要件」「品質管理性の要件」については、権利者側に資料等が偏っていることが通常だと思われるので、抗弁する側(被告側)としては立証しにくいことが多いでしょう。
乱暴にいってしまえば
「並行輸入の抗弁は認められにくい」
と。
この問題においては中小企業さんが被告になることが多いと思われますが、、、
自分のお客さんの中には中小さんも多いので、現実的には、商標権侵害の可能性のリスクを理解してもらうことになってしまいます。
(あ、ちなみに、知財管理誌の記事は、「知財協さんの会員の企業さん」が留意すべき点、という視点で書いてます。)
⇒では、そもそも「真正品の並行輸入の抗弁が認められにくい」状況がいいことなのか?
真正品の並行輸入の抗弁を認めやすくする方向に向かうか否かは、究極的には政策的・経済的判断に影響されると思うのですが、
かな~り大雑把に言えば、
①認めやすくする→国際経済取引の流通を保護する方向に向かうがブランド毀損のリスクを伴う、
②認めにくくする→ブランド保護をし易くするが国際経済取引の流通を規制する方向に向かう、
ということになるのではないかと思っています。
どちらが良しとされるのか?
私は学者でもなくまだまだ勉強不足で、手に余る議論なので敢えて避けますが(汗)…
知り合いのある弁護士さんからは、
フレッドペリー最高裁判決の方向性は、特許のBBS最高裁判決(H9)の方向性と逆だ
とのコメントをいただきました(M先生、ありがとーございます!…って見てるかなー?)。
ざっくり言ってしまえば、大きな流れとして、
・特許のBBS事件(H9)は、上記①の方向性(もちろんブランドではないですが(汗))、
・商標のフレッドペリー事件(H15)は上記②の方向性
だと。
…これをどのように考えればよいのか。
(特に、同じ製品について特許権も商標権もひっかかる場合は?)
この点については、例えば立花市子先生が、“標識法である商標法と創作法である特許法との違いから、別途の結論となることが妥当でないとはいえない”とも述べておられます。
→知的財産法政策学研究 Vol.9(2005) FREDPERRY最高裁判決に見る商標機能論 77頁、注)9
(なお、「新商標法の論点」編者:第二弁護士会知的財産法研究会、2007年発行 314頁でもその辺りのことに触れられています。)
ちなみに、上記①と②の方向性の対立は、国際的にもTRIPs交渉においても激しく紛糾してきたところですが、TRIPs協定は消尽の問題には無関係だ、ということに落ち着いてます。
(詳しくは、産業経済研究所紀要 第18号 2008年3月 南北間自由貿易協定とTRIPS協定 67頁「消尽」の項 等をご参照ください)
ちょい堅いハナシになっちまいました…
本日はこの辺で。
次回も見ていただける方、ぷちっと押していただけると嬉しいです。
↓↓↓
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この記事を読んでひろた興味を持たれた方は…
【執筆記事】
「知財管理」誌 VOL.60 NO.6
(並行輸入と商標権侵害 -並行輸入の抗弁における「同一人性の要件」及び「品質管理性の要件」-)
「知財産管理」誌 VOL.58 NO.5
(「腸能力」審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件)
内容はこちらからどうぞ
【関係事件】
代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。
【ZIP FM Z-TIME BIZ】
ここのフォ
トギャラリーになぜかわたくしが。
見付からないよ~?→ここです
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また、判例・最近の話題は、“ホットなうちに”スピード重視でご紹介しておりますので、読み間違い・勘間違い・理解間違いがあるかもしれません。疑問を感じられたらご一報いただけるとありがたく存じます<( )>
コメント
Unknown
ご無沙汰しております。
「知財管理」誌なかなか手元まで廻ってきません。知財協HPのアップの方が早いかも、、、(泣)
並行輸入は政策論まで絡むのでややこしいですね。
フレッドペリー事件も最高裁判決の前に確定した大阪ルートの判決ではたしか逆のこと言ってたような気がしますし、
最高裁判決後のBODYGLOVE事件なんてのはおっしゃる所の①と②のさじ加減に最高裁判決との微妙な温度差があるように思えるのですが、この辺り先生の論文でどのように検討されているか楽しみにしてます。
Unknown
あれ?「知財管理」誌、まだお手許に届いてないのですか…他の方は届いたと仰ってましたので、地域差があるのかな?ってどんだけ田舎やねーん(笑)
そうですねー、
フレッドペリー事件は製造地制限条項違反で、商標機能を害するからNG、
BODYGLOVE事件は販売地制限条項違反で、商標機能を害さないからセーフ、
ということでしたが…
つか、私の記事は判例評釈ではないので、あんましその辺は検討しとりません。
その辺のことは「知財管理」Vol.54 No.9 2004で仙元隆一郎先生が述べておられるようですー
Unknown
あれ?「知財管理」誌、まだお手許に届いてないのですか…他の方は届いたと仰ってましたので、地域差があるのかな?ってどんだけ田舎やねーん(笑)
そうですねー、
フレッドペリー事件は製造地制限条項違反で、商標機能を害するからNG、
BODYGLOVE事件は販売地制限条項違反で、商標機能を害さないからセーフ、
ということでしたが…
つか、私の記事は判例評釈ではないので、あんましその辺は検討しとりません。
その辺のことは「知財管理」Vol.54 No.9 2004で仙元隆一郎先生が述べておられるようですー
いったいどんな条項に違反しているのか、被疑侵害者側からはわかりづらいところがあるので、中小の輸入業者さんにはリスクを十分理解してもらうようにしています。