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【中国意匠】模倣品対策シリーズ(2) -中国意匠制度の活用法と注意点-

2013.02.21
シリーズ(1)では、中国での意匠出願の重要性についてご説明しましたが、今回は中国意匠制度の活用法と注意点をご紹介いたします。

登録要件に関して

■拡大先願は同一出願人による出願にも適用(特22条2項)

 2009年の第三次改正により、新規性につき世界公知の採用、創作非容易性規定追加及びいわゆる拡大先願規定追加がなされました。
 このうち、拡大先願は、同一出願人による出願についても適用がありますが、例えば完成品の出願より後に、その完成品中に表れていた部品を出願する場合、後願はおそらく無効理由を有すると考えられるようです(尹新天『中国専利法詳解』)。無効理由を有するのであれば、基礎出願も同日に出願しておくことが必要となるので、注意が必要です。

■新規性喪失例外の適用範囲が限定的

 新規性喪失の例外の適用範囲は日本よりも範囲がずっと狭く、下記(1)~(3)に限られ、自己の販売やネット上での公開等を行った場合には、救済措置がありません。また、下記(2)の会議等はリストが公表されておらず確かめられない場合もあり得るので、できれば新規性喪失例外の適用を受けなくてもいいよう発表を控えた方が安全です。
(1)中国政府が主催/承認した国際博覧会で初めて展示された意匠、
(2)規定の学術会議等で初めて発表された意匠、
(3)意図に反する第三者の漏洩により公開された意匠

出願手続に関して

■部分意匠制度がない

 中国では部分意匠制度がないので、日本で部分意匠の意匠登録出願を行い、その出願に基づいて中国に優先権主張出願をする場合も、破線部分を実線に直す必要があります。この場合、1) 日本出願と中国出願の意匠に係る物品が同一、2) 日本出願に係る意匠が中国出願に明確に表わされている、という二つの要件を満たせば、意匠の同一性が認められ、優先権が認められることになります(審査指南第四部分第5章9.2)。
 この場合、次のように中国出願した場合も優先権が認められる、とする代理人もいるようです
・基礎出願に表れていた破線部分の形状を若干省略して中国出願する。
・基礎出願の実線部分を独立部品として取扱い可能な場合、その部品のみ(破線部分を全て除外する)につき中国出願をする。

*審査指南は頻繁に改正されますので、出願前に中国代理人にご確認ください。

■「意匠の簡単な説明」は必須記載事項(特27条)

 「意匠の簡単な説明」中には、「商品の名称」、「商品の用途」、「意匠の設計要点」、「設計要点を最も明確に表現する図面又は写真」を含める必要がありますが、日本の特徴記載制度と異なり、「意匠の設計要点」、「設計要点を最も明確に表現する図面又は写真」も、権利範囲解釈にも参酌され得ることに注意を要します。
 また、「意匠の簡単な説明」は必須記載事項なので、基礎出願中に記載されていない事項を「意匠の簡単な説明」で追加すると、優先権が認められない可能性もあるため、注意が必要です。

■併合出願

 1) 同一物品に係る二以上の類似意匠、又は2) 同一区分に属し、かつ、組物として販売/使用される物品に係る二以上の意匠と認められれば、1件の出願に10つの類似意匠(1つの基本意匠含む)を含ませることができます。
 1) は日本の関連意匠と似た制度で、色違いや部分のバリエーションにつき出願できるメリットがあります。なお、日本で本意匠Aと関連意匠Bを同日に出願し、中国で優先権を主張する場合、意匠A,Bを1件の出願に併合しておくことが必要です。中国での現実の出願日が異なると意匠を併合することはできず、後願の意匠が無効理由を有することとなるのでご注意ください。

★部分意匠制度が無いことの埋め合せ
 ケースによりますが、「意匠の設計要点」と併合出願の1)を上手く利用して、ある程度、部分意匠制度が無いことの埋め合せが出来ることも考えられます。
 また、部分が部品としても捉えられる場合、部品として登録しておけば、完成品の意匠に権利が及ぶことも期待できます。

その他の注意点

■存続期間

 存続期間は「出願日」から10年です。

■実施行為としての「使用」

 実施行為としての「使用」がありませんので、実質的に製造行為と認められるような実施等でないと侵害を抑えにくいのが現状です。

■秘密意匠制度

 中国には、秘密意匠制度がありません。


以上のように、中国の意匠制度は日本の意匠制度とは異なる点が多いので、出願前に戦略を立てておくことが必要です。


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