<平成20年(ワ)第8761号意匠権侵害差止等請求事件>(判決文はこちら)
今日の最初の話題はこれしかありません!
おめでとうーマサさん!(嬉泣)
名古屋が誇る中高年の星!これからもずーと頑張って欲しいです!
もぉーこの際だから、マサさんのHPをご覧ください→中日ドラゴンズ・山本昌広のページ
ドラゴンズ、快調、快調、あははー。
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さて、本日は、意匠権侵害事件を取り上げます。
本件の原告さんの登録意匠は2つありました。
○まず1つ目の本件登録意匠1です(登録第1280893号)。
意匠に係る物品:「測量地点明示プレート」
斜視図
底面図
一方、被告が実施していたプレートは、新旧2つありました。
被告旧プレート。本件意匠登録1と類似と判断されています。
平面図
平面斜視図・底面斜視図
被告新プレート。本件登録意匠1と非類似と判断されています。
平面図・底面図
平面斜視図・底面斜視図
なぜに被告旧プレートが類似と判断され、被告新プレートが非類似と判断されたのかは、以下のとおり。
○まず、原告さんの本件登録意匠1の要部は、以下のように判断されました(判決文42~45頁)。
最初に、裁判所が示した類否判断の考え方を述べています(判決文42~43頁)。
『登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は,需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものである(意匠法24条2項)。したがって,その判断にあたっては,意匠に係る物品の性質,用途,使用態様,さらには公知意匠にない新規な創作部分の存否等を参酌して,需要者の注意を惹き付ける部分を要部として把握した上で,両意匠が要部において構成態様を共通にするか否かを中心に観察し,全体として美感を共通にするか否かを判断すべきである。』(下線は私が付しました)
そして、特に、測量地点明示プレートの性質、用途、使用態様については以下のように述べています(判決文43頁)。
『測量地点明示プレートは,測量地点に設置して位置情報を明示する金属標に使用されるものであり,その金属標を設置する業者等が需要者であるが,前提事実(4)の経緯により,測量地点明示プレートは,ICタグを収容できるものが使用されることとなった。
このため,需要者は,測量地点明示プレートの取引にあたり,設置時の表示状態だけでなく,ICタグのデータの読み取り方法等を考慮するものであり,通常,上方あるいは斜め上方からの観察を中心としつつも,ICタグの収容状況や,電磁波の読み取りに関連する切り込み部分の状況を含めた,全体的な観察を行うと考えられる。』(下線は私が付しました)
以上に加え、公知意匠も参酌した上で、本件登録意匠1の要部は、以下の部分だと認定しています(判決文45頁)。
『…本件登録意匠1の要部は,外周面に近接した位置で,上下面を貫通して略円筒状にくり抜かれた収容孔,上下面を貫通して設けられた収容孔から外周面へ通じる垂直状の細幅の切り込み部,収容孔の上面の各形状(鍵穴型をイメージ)であると認められる。』(下線と黒字の括弧は私が付しました)
パッと見では、収容孔と切り込み部が一体となった“上面の鍵穴型イメージの形状”がわかりやすいでしょうか。
○被告旧プレートとの類否判断です(判決文45~48頁)。
上記したように、被告旧プレートは、本件登録意匠1と類似と判断されています。
『外周面に近接して,上下面を貫通してICタグを収容する,略円筒状にくり抜かれた収容孔を設けている点,収容孔から外周面へ縦に細溝状の切り込み部を形成している点,収容孔の上面の口径を小さくしている点で共通している。
そして,これらの共通点は,いずれも本件登録意匠1を特徴づけるものであり,その視覚的効果は,意匠全体として,両意匠に共通した美感を起こさせるといえる。』(判決文46~47頁)
なお、被告旧プレートは、収容孔の縮径の程度(差異点(ア))が相違し、その結果、上面側における収容孔と切り込み部からなる形状(差異点(イ))も詳細を見ると相違しますが、
差異点(ア)については、通常の観察方向である斜め上方から観察した場合に得られる印象と比べ、看者に与える印象の度合いが小さく、全体的な美感に影響を及ぼさない等とされ、
差異点(イ)についても、被告旧プレートは収容孔と切り込み部との組合せが鍵穴型をイメージさせないものの、収容孔と切り込み部の組合せにおける比率の相違に過ぎず、共通点を凌駕するほど大きな差異でない等とされています(判決文47頁)。←ここ読み違えてましたので後日修正しています
○被告新プレートとの類否判断です(判決文48~50頁)。
上記したように、被告新プレートは、本件登録意匠1と非類似と判断されています。
『被告新プレート意匠は,切り込み部周辺の形状や,外周面における切り込み部の形状において,本件登録意匠1や,これと類似すると認められる被告旧プレート意匠とは異なる,特徴的な構成態様を有している。そして,この差異点から受ける印象は,本件登録意匠1との共通点から受ける印象を凌駕していると認められるから,被告新プレート意匠は,本件登録意匠1が視覚を通じて起こさせる全体としての美感を共通にしているとはいえない。』(判決文49~50頁)
で、被告新プレートが本件意匠登録1と相違するとされた特徴的な構成態様とは、こちら。
『被告新プレート意匠では,本件登録意匠1とは異なり,切り込み部の両側に並行に沿って,2本の浅い細溝が設けられているため(前記イ(ア)),深さこそ異なるものの,斜め上方から見た場合は,あたかも3本の切り込み部が形成されているかのような印象を看者に与える。
また,切り込み部形成箇所の外周面を,斜め上方あるいは側面から見た場合,本件登録意匠1における直線状と,被告新プレート意匠における,やや下部で左右に分岐する逆T字状とでは,看者に与える印象が大きく異なる。
したがって,両意匠は,本件登録意匠1において特徴的であり,需要者が特に注目する,全体的な美感に影響を及ぼす部分において,視覚的な印象を異にするといえる。』(判決文49頁)
○なお、被告さんは、本件登録意匠1が、新規性欠如ないし容易創作の無効理由を有することを理由に抗弁しておりましたが、認められませんでした(判決文50~53頁)。
本日はここまで。
明日は本件登録意匠2について & ちょっとおもしろいと思った論点をご紹介します。
次回も見ていただける方、ぷちっと押してね!でないと更新する気力がなくなってまう…
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この記事を読んでひろた興味を持たれた方は…
【執筆記事】
「知財管理」誌 VOL.60 NO.6
(並行輸入と商標権侵害 -並行輸入の抗弁における「同一人性の要件」及び「品質管理性の要件」-)
「知財産管理」誌 VOL.58 NO.5
(「腸能力」審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件)
内容はこちらからどうぞ
【関係事件】
代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。
【ZIP FM Z-TIME BIZ】
ここのフォトギャラリーになぜかわたくしが。
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