「商標・意匠・不正競争判例百選」読み合わせ勉強会No.16

毎週1回『商標・意匠・不正競争判例百選(第2版) 別冊ジュリスト』の読み合わせ勉強会に参加しています。勉強会の内容を自分的に整理した覚書メモです。

31. 小僧寿し事件(H6(オ)1102)

【テーマ】自己の名称の表示

【メモ】

○事件の概要はこちら(”侵害場面の類似判断にける取引実情の考慮”のテーマで前出)

「商標・意匠・不正競争判例百選」読み合わせ勉強会No.11
毎週1回『商標・意匠・不正競争判例百選(第2版) 別冊ジュリスト』の読み合わせ勉強会に参加しています。勉強会の内容を自分的に整理した覚書メモです。 21.大森林事件(H3(オ)1805) 【テーマ】 侵害場面における取...

 

○26(1)1

・「自己の名称」

商号が含まれることには争いがない。
最高裁として初めて、フランチャイズ契約によって結合した企業グループの名称が、「自己の名称」に該当すると判断。
*三村先生の論説では、不競法の例に従い、契約で縛っているグループ等の名称が挙げられている…とのこと。

*O先生の情報
ひかり法務司法書士事件
個人事業主が使用していた屋号 「ひかり法務司法書士事務所」は「自己の名称」に該当すると判断
(但し、明らかに需要者の注意を惹くような態様で表記なので「普通に用いられる方法」に該当しない)

・「普通に用いられる方法」

文字商標と図形商標とを一体的に組合せた使用態様から、「普通に用いられる方法」ではないと判断。

 

○「残された問題」に対して

『知名度のない本件商標の商標権者が著名な略称「小僧寿し」について侵害訴訟を提起したということになるが、訴えのそもそもの妥当性について議論の余地がありそうである。』

*S先生のご意見
「そんなこと言われたら、商標権者としてどうしていいかわからない」
まさにその通り!と激しく同意です。
上でリンク張った”侵害場面の類似判断にける取引実情の考慮”のテーマのエントリでも書いたけど、経緯をみると、この商標権者は、商標権者として”正しい道”を歩んでいたようなので、それ言われると「商標権って取得する意味あんの?」になっちゃうよ…(´;ω;`)

 

 

32. ゼルダ事件(H3(ネ)4601)

【テーマ】先使用

【メモ】

○事件の概要(時系列的経緯)
X「ゼルダ」「ZELDA」×婦人服に使用
– 展示会開催、展示会開催前に百貨店や業界紙の新聞社等に案内状送付、一般消費者にDM送付
Y「ゼルダ」×「被服」等 出願→登録
Y 警告書をXに送付(金銭的条件が到底受け入れられないものだった)
X 一時的に商標使用中止
X Yの差止請求権不存在確認訴訟

 

○先使用権における「周知」

4(1)10における「周知」との関係

・「同一説」
4(1)10の「周知」と 32の「周知」は表裏一体、32条が効くのは無効審判の除斥期間経過後

・「非同一説」(近時の多数説はこっち)
本判決はこの旨を明示的に述べた

4(1)10の「周知」(数県程度相当の地理的範囲等)>32の「周知」(より狭い範囲)
–  4(1)10は周知商標使用者/出願人のどっちが商標権を得られるかの二者択一
– 32は商標権存続を許しながら、先使用者との関係でのみその権利行使を阻む→いかなる先使用であればその継続使用が保護されてよいか

*K先生から
パテント誌にわかりやすいまとめがあります
https://system.jpaa.or.jp/patents_files_old/201510/jpaapatent201510_113-118.pdf

 

○コメント

本事案は、商標権者の出願時期が微妙だし、警告書での金銭的条件が”到底受け入れられない”ものだったようだし、Xさんは一時的に商標使用中止してるし…ってことで、「先使用権をなんとか認めよう」という結論ありきの判断だったのかな、とかと思いつつ…

アパレルみたいなBtoC商品で、Bの間だけで周知の場合(エンドユーザーの間で周知でない場合)に先使用権を認めてしまうと、エンド市場で複数の類似ブランド商品が流通したときに、エンドユーザーの目線では混同してしまうという問題が生じ得るのでは。
周知の範囲と使用範囲がイコールでない場合(周知範囲<使用範囲 の場合)、なにかで縛りをかけないと影響が大きそう。 混同防止表示もツールの一つになるかもしれないが…。

 

2021年最初の勉強会も濃い内容でした!

 

 

 

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