審決と真逆な判決、一体何が…

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  若い男子を押しのけ事務所一懸垂ができるかもしれないことが判明し、やや焦っているひろたでございます、こんにちは。
 今日は53条の2の取消審判の審決の取消請求事件をご紹介します。

■概要

○指定商品の一部につき登録を取消された商標はこちら(登録第4927377号)。商標権者たる原告さんが所有しております。
 
 
一方、引用商標はこちら。取消審判の請求人たる被告さんがイタリアで所有している登録商標です。
 
 
 (両商標は、取消審判の審決では類似と判断され、本判決では判断自体なされておりません。)
  
○原告さんと被告さんの関係に関する経緯はこんな感じでした。

 H17.1   原告さん、被告さんの収穫するハーブ等を製品化し日本等で販売する計画を立ち上げ
             (原告さんとIBSイタリアーナ社の間で電子メールのやりとり、原告さんアグロナチュラ事業を開始)
 H17.2    原告さん、被告さんから商品サンプルを購入して検討を開始
  H17.5.12 原告さん、本件商標を出願
 H17.9.1  原告さん、被告さん及びIBSイタリアーナ社との間で独占的販売契約を締結
 H18.2.   原告さんの本件商標が登録
 H19.3.   被告さん、原告さんに“本件商標はパリ条約に違反する”旨の警告文送付
 H19.8.   原告さん、被告さんに契約関係を終了さえる旨の通知
 H19.11.  被告さん、53条の2取消審判請求
 H21.4.   53条の2取消審決(結論第1項:一部の指定商品についての登録を取り消す、結論第2項:その余の指定商品の審判請求は成り立たない)

 そして、今回の審決取消訴訟では、原告さんは結論第1項の取消し、被告さんは結論第2項の取消しを求めたのでありました。

■争点
 
 主な争点は、本件商標が、53条の2の「当該商標登録出願の日前一年以内に代理人…であった者によってされたもの」であるか否かでございました。
 上記のように、本件商標はH17.5.12に出願され、その後の9.1に原告さんと被告さんの間でいわゆる代理人契約が締結されたわけですが、問題は、本件商標の出願前(H17.1頃)から実質的に代理人と言えるような関係ありやなしや。

 取消審判の審決では、このように判断されておりました(請求人=被告さん、被請求人=原告さん)。
 『以上のとおり、上記した甲各号証には、随所に請求人に係る商品であることを認識させる説明、紹介などの表示があり、たとい被請求人(イデア社)が直接的に請求人に係る商品の販売に関する代理人たる地位を有していた事を証するものがないとしても、請求人に係る商品を取り扱っていたことを示す被請求人に係るパンフレット、同インターネット上のウェブサイト情報、及び商品の包装紙への「輸入者」等の表示等により、請求人の製造に係る商品について販売していた事実は否定し得ず、その代理人(販売元)たる地位を有していた事実を確証付けるものである
 また、2005年5月15日送信の電子メール(甲第13号証)における「東京」が被請求人を指称するものでないとしても、IBSイタリアーナ社が日本における請求人に係る商品の販売に関して仲介の役割を担っていた者といえるものであって、請求人とIBSイタリアーナ社の間には、日本での請求人に係る商品の販売代理人等の選択に関して、仲介者としての関係にあったということが十分に窺えるものである。
 さらに、甲第20号証の1ないし6のIBSイタリアーナ社から請求人に対しての書簡からは、IBSイタリアーナ社が「AGRONATURA」を使用した請求人に係る商品に関し、請求人と被請求人(イデア社)を結ぶ仲介者としての関係にあったといえる。
 そうすると、被請求人(イデア社)は、請求人に係る商品を販売するに際し、請求人とは、仲介者としてのIBSイタリアーナ社を介して日本国内の販売者として緊密な関係にあり、かつ、「輸入者」であることを標榜し、本件商標の登録出願日又はその日前1年以内に、IBSイタリアーナ社を経由し請求人と商取引をしていたものであるから、当該「アグロナチュラ・ブランドの化粧品類(ビオリーブス、アントス、アグロナチュラ)」に関して、代理人(販売元)たる地位を実質的に有していた者というべきである
 したがって、被請求人(イデア社)は、商標法第53条の2に規定される「その商標登録出願が、その代理人若しくは代表者、又はその出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者」に該当するものと認められる。
』(下線は私が付しました)
 
 このように審決では、原告さん(被請求人)は、H17.1頃から実質的に代理人たる地位を有しており、53条の2の「当該商標登録出願の日前一年以内に代理人…であった者」に該当すると判断されたのでした。

 では、本判決。

 本判決ではどのように判断されたかというと、このように判断されております(判決文70~71頁)。
 『…同条が適用されるためには,本件に即していえば,本件商標登録出願がなされた平成17年5月12日の1年前である平成16年5月12日から平成17年5月12日までの間に原告が被告の「代理人」であったことが必要となるところ,前記のとおり,原告は本件商標登録出願後3か月余を経過した平成1 7 年9 月1 日付けで被告との間で独占的販売契約( Exclusive Distributorship Agreement)を締結して,原告が何らかの意味で被告の代理人となったことは認められるが,それ以前は,被告から顧客として商品サンプルを購入して上記契約を締結するかどうかを検討する期間であったと認めることができる(原告が被告から商品を業として大量に購入するようになったのは,前記のとおり上記契約締結後である)。
 確かに,原告は,自らの会社案内に関するウェブページの「沿革」欄に,平成17年1月に被告と業務提携をした旨記載している(甲29)が,他方,平成17年5月2日付けの日経MJ新聞(甲53)では,原告とビオリーブス社(被告ではない)が販売代理店契約を締結した旨記載されていて,ウェブページ上の「被告との業務提携」との記載が誤りであったとみる余地もあり,その他前記イの事実関係に照らすと,上記ウェブページの記載は,原告が被告の「代理人」となったのは平成17年9月1日以降であるとする前記認定を左右するものではない。
  そうすると,本件商標登録出願がなされた平成17年5月12日より1年前以内に原告は被告の「代理人」であったとした審決は誤りであるということになる。
』(下線は私が付しました)

 おお、審決と真逆の判断…。
 どの事実が判決の判断に一番効いたのか、詳細に見てみる必要がありますが、、、すんません、まだそこまで手が回ってません、おわかりになった方は是非ご連絡を(他力本願(汗))。
 
 うーん、それにしても、被告さんのイタリア商標が周知でなかったら4条1項19号で登録無効とか微妙だし、やっぱ53条の2で審判請求するしかなかっただろうな~、何となく気の毒なのかなぁ…とか思ったりして。

 なお、原告さんのウェブサイトでは、本判決についてのお知らせが掲載されております((株)イデアインターナショナル ウェブサイト 2011.01.31 審決取消訴訟の判決に関するお知らせ)。

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※左上の画像データは名古屋市さんのご好意により提供していただきました。

この記事を読んでひろた興味を持たれた方は…

【執筆記事】
  
「知財管理」誌 VOL.60  NO.6
  (並行輸入と商標権侵害 -並行輸入の抗弁における「同一人性の要件」及び「品質管理性の要件」-)

  「知財産管理」誌 VOL.58 NO.5
  (「腸能力」審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件)

【関係事件】
 代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
 
平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
 なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。

【ZIP FM Z-TIME BIZ】
 ここのフォトギャラリーになぜかわたくしが。
  見付からないよ~?→2008/07/23のところ…

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コメント

  1. 【商標権:審決取消請求事件(行政訴訟)/知財高裁/平23・1・31/平21(行ケ)10138等】原告:(株)イデアインターナショナル/被告:アグロ…
    事案の概要(by Bot): 本件は,日本法人である原告株式会社イデアインターナショナル(以下「イデア社」ということもある)が商標権を有する下記商標登録第4927377号(日本国商標,出願平成17年5月12日,登録平成18年2月10日,以下「本件商標」という)につき,イタリア国…

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