Dawn Donut Ruleは、ネット時代でもまだ有効?

海外の商標意匠系ブログ、代理人からのニューズレター、INTA BULLETAIN等から、ひろたが独断と偏見で面白いと思った記事をピックアップして、かなり端折ったり脚色したりした「和風アレンジ版」にしてご紹介します!
…うにゃ?「和風アレンジ」して原文の原型をとどめてるかって? えーと、そう言われると… 著作権的な問題もありますしね…
でもポイントは外してないつもりです…(たぶん)。疑いを拭いきれない方は、原文に当たってみてください(汗)。

今日は、米国商標に関する記事が元ネタです。
「Is the Dawn Donut Rule Still Viable in the Internet Age?」
by Kimberly A. Eckhart and Tom J. Kearney, Winston & Strawn LLP, Chicago, Illinois, USA;  INTA Bulletin vol.67 No.7 April1, 2012発行 より
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おっと、この記事、INTAの会員でないと見れないかー(汗)。すみません…。

Dawn Donut Ruleは、ネット時代でもまだ有効?
■Dawn Donut Rule
米国はコモンローの国なので使用事実により商標の権利が発生いたしますね。& 米国の商標権侵害では「混同」が要件となっとりますね。
なので、例えば、名古屋駅前で昭和から営業しているうどん店「みそにこ亭」があっとして、最近になって、高松駅前で別の「みそにこ亭」が開店したとしても、まぁ混同しんでしょーということで高松が名古屋の商標権侵害ということにはならんのではないでしょうか。
…あれ?なぜか日本の話になってしまいました、そもそも讃岐うどんをみそにこにするのは邪道なのであり得んですか。つか、たいてい、こういう話は、“高松の方が先に出願して商標登録してしまったら、名古屋の方は商標権侵害になり得るんですよー”という先願主義的なオチですね…(先使用権を得るのはなかなか難しい的な)
話を米国に戻しまして、Dawn Donut事件です。
この事件では、ドーナツ等の食料品卸会社が「DAWN」「DAWN DONUT」商標を先使用してたところ、別のドーナツ系小売店がRochester辺りで「DAWN」商標を使ったので、先の卸会社さんが原告となって訴えたのですが、原告卸会社さんは、小売ではその商標を使ってなかったし、また、被告小売店さんの営業エリアでも使ってなかったので、商標権侵害が認められなかったという話。

この事件のSecond Circuitの下記判示が、“Dawn Donut Rule”として、後の判決に影響を与えたのでした。
  Therefore, if the use of the marks by the registrant and the unauthorized user are confined to geographically separate markets, with no likelihood that the registrant will expand his use into the defendant’s market, so that no public confusion is possible, then the registrant is not entitled to enjoin the junior user’s use of the mark.
 つまり、お互いに地理的に離れたマーケット内だけで使われる商標だったら混同のおそれもないだろうから、商標権侵害を問えませんね、というルールです。
■ネット時代
ところがDawn Donut Ruleの判決が出たのは1959というえらい昔で、今のようにネットがなかった時代です。ネット全盛の現在では、“現実のマーケットが地理的に離れていても、ネット上で商売しとったらお互いに混同生じることもあるんでないのー”という疑問が出てくるわけです。
先の例だと、若い店主の高松の方がネットで「みそにこ亭」うどんを販売開始して商標登録もしたところ、名古屋の方のおっさん店主がようやく重い腰を上げて「みそにこ亭」うどんをネット販売し始めたら、さぁ大変… というオチですね。
じゃなくてー。
米国の話です(汗)。先使用主義&「混同」が侵害たる条件の。「みそにこ亭」の話出したら、混乱するがね?

さて、ネットの影響を考慮して、Dawn Donut Ruleを初めて否定した判決が、Sixth Circuit. In Circuit City Stores, Inc. v. CarMax, Inc. (165 F.3d 1047 (6th Cir. 1999))でございました。
この判決では、“地理的に離れているということは、混同のおそれがあるか否かを決定する一つの要素に過ぎない”とし、Circuit Judge Nathaniel Jonesさんはこんなふうに見解を示しました。

 The Dawn Donut Rule was enunciated in 1959. Entering the new millennium, our society is far more mobile than it was four decades ago. For this reason and given that recent technological innovations such as the Internet are increasingly deconstructing geographical barriers for marketing purposes, it appears to me that a reexamination of precedents would be timely to determine whether the Dawn Donut Rule has outlived its usefulness.
■傾向及びガイダンス
元ネタ筆者のKimberly A. Eckhart and Tom J. Kearneyさんによると、その後の裁判所の傾向としてDawn Donut Ruleを当然原則としては見ていないようでして、特に最近の判例からすると、地理的に離れたマーケットの商標使用者に対して差止めを行うために、下記のようなガイダンスが導かれそうだ、ということです。
1.まだ物理的/地理的に拘束されるようなサービスを行っている場合、裁判所は、Dawn Donut Ruleを適用する可能性が高くなる。
2.単なる広告としてだけでなく、取引経路としてネットを活用している場合は、Dawn Donut Ruleの有効性は減じられる。権利者・被疑侵害者ともネット上で商品販売しているような場合は、現実の物理的地理が混同のおそれを決定する要因にはならない。
3.Dawn Donut Ruleは、厳格に適用されたとしても、後使用者に当座の防御しか提供できない。先使用・先登録者が、マーケットに登場した途端に、差止め発効がなされ得る。ネットのおかげで、先使用者は、より迅速に、後使用者がいる離れたエリアで信用を確立して売上を伸ばすことが可能となる一方、後使用者の防御がますます難しくなりがち。
■まとめ
Kimberly A. Eckhart and Tom J. Kearneyさん曰く、
「Dawn Donut Ruleはネット時代でもまだ有効で、このルールを明確に否定したのはthe Sixth Circuitしかないけど、ネットは裁判所の考え方に影響を与えてきています。なので、お客さんのビジネス形態がどんなで、地理的要素がどんな風に考慮されそうか考えて、アドバイスするといいですねー。」
…以上、Kimberly A. Eckhart and Tom J. Kearneyさんがたぶん言いたかったことを、和風アレンジ版にしてご紹介しましたー。
ネットだと、in USAだけに限らんから、日本のお客さんにもアドバイスできるんでないでしょうかー。
 

コメント

  1. 相互リンクをお願いいたします
    はじめまして。
    弁理士試験ストリートの管理人masanoriです。

    口述試験3度落ちにならないよう頑張りますので、
    相互リンクをよろしくお願いいたします。

    http://benrishi-street.com/

  2. Unknown
    masanoriさん、おはようございます。
    相互リンクのお誘いをいただきありがとうございました。

    このブログですが、弁理士試験系ブログと全く異なる路線で来ておりまして、そちらの業界?を侵食することのないようにさせていただいております。

    したがいまして、誠に心苦しいのですが、今回はご遠慮させていただけると幸甚に存じます。

    せっかくお誘いいただいたのに大変申し訳ございません。

    ひょっとしたら口述試験でお目にかかるかもしれませんし、試験に受かられましたら同業者の仲間として宜しくお願いいたします

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