あずきバー出ました

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<平成24年(行ケ)第10285号 審決取消請求事件>(判決文はこちら

 先週土曜日雪の中をジョギングして体に積もる雪を感じながらボクサー気分を堪能し、翌日日曜日に(テレビがないので)ワンセグの小さな画面でマニー・パッキャオの特集を見て闘志を高めていたたひろたです、皆さまいかがお過ごしでしょうか(ひろた、どこに向かっている!?)。
 そんな寒い日が続いておりますが、涼を感じさせるホットな話題がこちら。井村屋さんの「あずきバー」の商標判決が出ました。代理人は地元の重鎮先生ですので、おそるおそるご紹介いたします。

■本願商標

まずは本願商標から。

あずきバー」(標準文字)
指定商品:第30類「あずきを加味してなる菓子」

■JPOの審決

JPOの審決の理由をごくごく簡単に要約すると、以下のような感じです。
(1)本願商標を指定商品のうち「あずきを原材料とする棒状のアイス菓子」に使用すると、3条1項3号に該当する、
(2)本願商標は3条2項の要件を具備しない、
(3)本願商品を「あずきを原材料とする棒状のアイス菓子」以外の商品に使用すると、4条1項16号に該当する。

■訴訟における原告主張の取消事由

JPOの審決に対応して、原告(出願人)さんが主張しておられた取消事由は、以下のとおりです。

1.商標法3条1項3号該当性に係る認定判断の誤り(取消事由1)
2.商標法3条2項該当性に係る認定判断の誤り(取消事由2)
3.商標法4条1項16号該当性に係る認定判断の誤り(取消事由3)
4.審判における手続違背(取消事由4)

■裁判所の判断

以下では、上記取消事由のうち、特に取消事由2に対する裁判所の判断を中心に取り上げて、他の取消事由に対する判断はごく簡単にご紹介いたします。

1.商標法3条1項3号該当性に係る認定判断の誤り(取消事由1)について(判決文13-15頁)

取消事由1については、裁判所も、
本願商標は,「あずきバー」という標準文字からなるものであるにすぎないから,指定商品の品質,原材料又は形状を普通に用いられる方法で表示したものというほかない。
と判断し(判決文14頁)、原告さんの主張を採用しませんでした。

2.商標法3条2項該当性に係る認定判断の誤り(取消事由2)について(判決文15-18頁)

(1)本願商標の周知性

本願商標の周知性について、裁判所は、主として本件商標の販売実績や宣伝広告実績に基づき、以下のように判断しています。
…原告は,本件商品の発売以来,本件商品の包装に原告の会社名とともに,本件ロゴ書体,これを横書きにしたもの又はこれと社会通念上同一と見られる標章を付しており,上記の宣伝広告等においても当該包装が映った写真又は映像を使用することが少なくなく,当該宣伝広告等においては,ほぼ常に原告の会社名を重ねて紹介している
 このような本件商品の販売実績及び宣伝広告実績により,本件審決の時点までには,「あずきバー」との語でインターネット上の検索を行うと,表示される多数のウェブページではいずれも本願商標が原告の製造・販売に係る本件商品を意味するものとして使用されているほか,原告とは直接の関係が認められない著者により,「あずきバーはなぜ堅い?」との表題の書籍(平成22年7月16日刊行)が執筆・出版されるに至っている。
 以上のような本件商品の販売実績及び宣伝広告実績並びにこれらを通じて得られた知名度によれば,本件商品の商品名を標準文字で表す「あずきバー」との商標(本願商標)は,本件商品の販売開始当時以来,原告の製造・販売に係る本件商品を意味するものとして取引者,需要者の間で用いられる取引書類等で全国的に使用されてきたことが容易に推認され,本件審決当時でも,本件商品を意味するものとして価格表や取引書類等で現に広く使用されている。』(判決文15-16頁、下線は私が付しました)

なお、他社使用の「あずきバー」商標との関係については、以下のように述べています。
…,証拠上確認できる範囲内では,原告以外に3社が自社の商品に使用しているが,いずれも,「玄米あずきバー」(乙20),「十勝あずきバー」(乙21)及び「セイヒョー金太郎あずきバー」(乙22)という各商品の名称の一部として使用されているものである。しかも,これらのうち,「セイヒョー金太郎あずきバー」も,自社名を商品に付していることで差別化を図っていることがうかがえるばかりか,「玄米あずきバー」の広告ウェブページには,「ライバルは井○屋!!」との大きな記載があり,原告と本件商品との関係を強く意識した内容となっており,このことは,とりもなおさず本件商品が原告の製造・販売に係る商品として高い知名度を獲得していることを裏付けるものであるといえる。』(判決文16頁)

(2)被告の主張について

一方、本願指定商品と本件商品との関係については、被告の主張についての判断の中で、以下のように述べています。
被告は,本願商標の指定商品がアイス菓子に限定されないのに,原告がアイス菓子以外の「あずきを加味してなる菓子」について本願商標を使用していないから,本願商標が実際に使用している商品と指定商品が同一ではないと主張する。
 しかしながら,本願商標の指定商品は,「あずきを加味してなる菓子」として特定されているところ,本件商品は,アイス菓子ではあるものの,「あずきを加味してなる菓子」であることに変わりはなく,かつ,本願商標は,前記に認定のとおり,使用をされた結果需要者が原告の業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものと認められるから,商標法3条2項の要件を満たすといって妨げはないのであって,上記のように特定された本願商標の指定商品を更にアイス菓子とそれ以外に区分して判断すべき理由はない。
 よって,被告の上記主張は,採用することができない。』(判決文17頁、下線は私が付しました)

(3)以上のように、裁判所は、本願商標は3条2項の要件を満たすものである、と判断しました。

3.商標法4条1項16号該当性に係る認定判断の誤り(取消事由3)
4.審判における手続違背(取消事由4)

裁判所は、取消事由3については、本願商標は4条1項16号に該当せず被告の主張も採用できないとし、原告さんの主張を認めました。
一方、取消事由4については、手続違背はなく原告さんの主張には理由がないとしました。

5.結論

以上のように、取消事由2及び3には理由があり、JPOの審決は取消されるべきものと判断されました。「あずきバー」、晴れて登録すべきものと判断されたわけです~

■コメント

(1)本事案では、本願商標は標準文字でしたが、使用商標(ロゴ書体で、いつも会社名と重ねて紹介されている)との同一性が認められました。

なお、使用商標の「本件ロゴ書体」は、拒査不服審判で3条1項3号・4条1項16号に該当しないと判断され、登録審決されとります。

http://shohyo.shinketsu.jp/decision/tm/view/ViewDecision.do?number=1258246

ちなみに、本願商標が標準文字で、使用商標との同一性が認められなかった有名な事件としては、スピードクッキング事件がありました(平成18年(行ケ)10450号 審決取消請求事件)。その後、本願商標が標準文字で使用商標との同一性が認められた判決が出てたような気が…(記憶が定かでありません。どなたかご存知でしたら教えてください…)。

(2)また、本事案では、本願指定商品と本件商品との同一性が認められています。

ちなみに、工藤先生の「商標審査基準の解説」(第7版)を拝見すると、こんなことが書かれています(134-135頁)。

使用を前提として登録が認められるのであるから、使用しているものに限られる…使用による識別力が認められるのは、使用に係る商品で、いわゆる「単品」が原則である。
 …
 なお、実務において、第3条第1項第3号等の拒絶理由に対して、使用による識別力の取得を主張して使用に係る資料等を提出する場合が多いが、その場合は必ず同時に指定商品又役務も使用に係るものに補正しなければならない。指定商品又は役務が出願時の使用商品又は役務以外のものを含んだままというのも結構みられ、そのような出願については第3条第2項は適用されず、拒絶されることとなる。

本日は以上です!次回も見ていただけるならぽちっと押してくださいな(。-_-。)/
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コメント

  1. Unknown
    突っ込みどころが多い判決ですよね。
    後日私も記事にしたいと思います。

  2. Unknown
    untm1さん、コメントありがとうございます。

    私の記事は短時間でダーと書いたものなので、判決をもっと精読すれば、もっと検討すべき事項があるかと思います。
    楽しみにしてます~

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