「普通の言葉」「よく使われる言葉」かどうかの ボーダーラインって?

 

久しぶりの更新です!

 

お客様からよく訊かれる「ご相談トップ10」の1つが、

「この言葉は普通の言葉なので、商標を気にしなくていいですよね?」

「一般的によく使われているから、使っても大丈夫ですよね?」

といった類いのご質問です。

 

この類いのご相談は回答が簡単でしょ?

と思いきや、即答できないことも少なくないです。

 

たとえば、以下の7つのうち、どれが商標登録されてて、どれが商標登録されなかったか、わかりますか?
(答えは、一番下に)

①「たんぱく質を含有したパン」に『たんぱく栄養食』
②「飲食物の提供」に『焼きうお』
③「日本酒」に『夢』
④「加工済みナッツ類」に『コラーゲンナッツ\Collagen NUTS』
⑤「アロエを使用した乳製品」に『アロエの力』
⑥「菓子」に『リキュールマロン』
⑦「清涼飲料」に『パワードリンク』

 

パッと見ただけでは、ちょっと判断しがたいのでは?と思います。

商標の専門家(弁理士)であっても、正直、即答できないと思います。

 

 

「普通」とか「一般的」とかにまつわる問題点は、大きく2段階に分かれます。

 

1.「普通」とか「一般的」とかは、その言葉が使われてる商品やサービスとの関係で左右される。

例えば、「アップル」は商品「リンゴ」とか「果実飲料」等に使えば、さすがに「普通」「一般的」です(商品そのものの普通名称だったり、内容を表す品質表示だったり)。

ですが、「リンゴ」とはかけ離れた「パソコン」や「スマホ」等に使うと「普通」「一般的」でなくなる、というのが商標の世界です。

 

2. その言葉が使われてる商品やサービスとの関係でみたとしても、「普通」とか「一般的」に思えても、実は、商標登録されてるものも、結構ある。

例えば、「ひつまぶし」って、商品名そのものじゃん!と思いきや、商標登録されとります(登録1996631)。
上の①~⑦も、5つは商標登録されとります(詳細は一番下に)。

 

…てなわけで…

商売上使う商品名やサービス名について、他者さんの権利侵害を回避したいと思ったら、愚直に1個1個調べる

のが、まあ王道ではあります。

面倒っちいですけどね…。

 

 

 

【答え】
①~⑦のうち、
④「コラーゲンナッツ\Collagen NUTS」と
⑦「パワードリンク」
以外は、登録されました。

 

①「たんぱく質を含有したパン」に『たんぱく栄養食』 登録されました。
登録6504400
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2019-108864/F3E3AA4812978F81671828004C988F24E05AAA494CC7008E48804050ED516208/40/ja

3(1)3で拒絶査定→審判で登録
拒絶2021-004498
『…これらの語を結合してなる「たんぱく栄養食」の文字は、特定の意味合いを表示したものとして直ちに理解されるとはいい難いものである。
また、当審において職権をもって調査するも、本願の指定商品を取り扱う業界において、「たんぱく栄養食」の文字が、商品の品質を直接的、かつ、具体的に表示するものとして、取引上一般に使用されている事実は発見できず、さらに、本願商標に接する取引者、需要者が、当該文字を商品の品質等を表示したものと認識するというべき事情も発見できなかった。』

 

②「飲食物の提供」に『焼きうお』 登録されました。
登録6445223
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2019-129278/83E973FA2C18834EEE773CD6889EBFC939393BFACBF5064922CE2E2F4BA77D5D/40/ja

3(1)3, 4(1)16で拒絶査定→審判で登録
拒絶2020-017462
『当審において職権をもって調査したところ、本願の指定役務を取り扱う業界における請求人以外の者による「焼うお」、「焼きうお」又は「やきうお」の各文字の使用について、メニュー名として「焼うお」又は「焼きうお」の使用が3件あり、飲食店の店名の一部として「やきうお処」の使用が2件あったものの、それらは僅かな数であることからすると、「焼うお」、「焼きうお」又は「やきうお」の各文字が、同業界において、役務の質を表示するものとして一般に使用されている実情があるとはいえない。
また、本願商標に接する取引者、需要者が、「焼うお」の文字を役務の質を表示したものと認識するというべき事情も発見できなかった。
そうすると、「焼うお」の文字からなる本願商標は、たとえ「焼いた魚」といった意味合いを認識させるとしても、その指定役務との関係において、役務の質を間接的に表示するにすぎないものというべきである。』

 

③「日本酒」に『夢』 登録されました。
登録4435958
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-1999-085339/0CBFE5734B424581DB5EDB10CC2CB3658C736920FEEF049AF60E21FAC7F98E04/40/ja

「夢」って普通の言葉ですが、「日本酒」との関係では、商品名そのものでも、内容等を表すものでもないので、登録されています。
え?「日本酒」は夢を与えるものだから、内容を表すって…?
それは「個人の感想ですよね?」(誰かのマネ(笑))

 

④「加工済みナッツ類」に『コラーゲンナッツ\Collagen NUTS』 登録されませんでした。
商願2018-072185
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2018-072185/EBD3227C94CF7B247F0200E34B3698C5C21FE8016D341AD3F03CA038D5D92B40/40/ja

3(1)3で拒絶査定→審判でも登録されませんでした。
拒絶2020-007811
上下二段で「コラーゲンナッツ/ Collagen Nuts」とした態様を「普通に用いられる態様」と認定した上で、
『本願指定商品を扱う分野において,コラーゲンを使用した商品を「コラーゲン○○(○○は商品の普通名称)」と称して取引,販売されていることが認められる。
さらに,原審において示した別掲4の例に加え,別掲5に示す例から,本願指定商品も含まれる食品を扱う分野においても,コラーゲンを使用した商品を「コラーゲン○○(○○は商品の普通名称)」と称して取引,販売されていることが認められる。
そうすると,本願商標を,その指定商品である「コラーゲンを使用してなる加工済みナッツ類」に使用した場合,これに接する取引者,需要者は,当該文字の意味及び上記の取引の実情から,「コラーゲンを使用してなる加工済みナッツ類」であること,すなわち,商品の品質を表示したものとして理解し,認識するにとどまると判断するのが相当である。』

 

⑤「アロエを使用した乳製品」に『アロエの力』 登録されました。
登録6380886
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2018-142439/D421CB9348360AE43CB6ADBF976F0A613BADDF99B914044517872FCFA450A215/40/ja

3(1)3で拒絶査定→審判で登録
拒絶2020-007973
『「アロエ」及び「力」の文字を格助詞「の」により結合した「アロエの力」の文字は,その指定商品との関係において,原審説示の意味合いを暗示させる場合があるとしても,これが本願指定商品の品質等を直接的に表示するものと直ちに理解されるとはいえず,むしろ,特定の意味合いを認識させることのない,一種の造語として認識し,把握されるというべきである。
また,当審において職権をもって調査するも,本願の指定商品を取り扱う業界において,「アロエの力」の文字が,商品の品質等を直接的に表示するものとして一般に使用されている事実は発見できず,さらに,本願商標に接する取引者,需要者が,当該文字を商品の品質等を表示したものと認識するというべき事情も発見できなかった。』

 

⑥「菓子」に『リキュールマロン』 登録されました。
登録6373956
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2019-063454/BFCD43BD2F07B99E2CC5C3F4C3FD99B21EDCD5A32A374AA9B87466B63DE8A91D/40/ja

3(1)3, 4(1)16で拒絶査定→審判で登録
拒絶2020-005028
『本願商標は、その構成中「リキュール」の文字は「混成酒の一種」の意味を、「マロン」の文字は「(多く洋菓子の材料として)栗」の意味を有する外来語(「広辞苑 第7版」岩波書店)であるものの、両語を結合して特定の意味を有する成語となるものではなく、それぞれの語義を結合した意味合いも具体性を欠くもので、直ちに特定の意味合いを認識、理解させるものではない。
また、当審において職権をもって調査するも、本願の指定商品を取り扱う業界において、「リキュールマロン」の文字又はそれに類する文字が、商品の具体的な品質又は原材料等を表示するもの(リキュール漬けの栗などを含む。)として一般に使用されている事実は発見できず、さらに、本願商標に接する取引者、需要者が、当該文字を商品の品質等を表示するものと認識するというべき事情も発見できなかった。』

 

⑦「清涼飲料」に『パワードリンク』 登録されませんでした。
商願2018-096468
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2018-096468/49E2C475CF8144E1B41766BD9530966B93719D5EEB6A4C1B3DD57896FB1C8537/40/ja

3(1)3で拒絶査定→審判でも登録されませんでした。
拒絶2020-003647
『本願商標は,上記1のとおり,「パワードリンク」の文字を標準文字で表してなるところ,構成中の「パワー」の文字は「力」の意味を,また,「ドリンク」の文字は「飲みもの」の意味を(いずれも,株式会社三省堂 大辞林第三版)有する語として一般に広く知られているものである。
そして,これらの語を結合した「パワードリンク」の文字は,本願商標の指定商品が含まれる飲食料品及び栄養補助食品との関係において,原審において示した別掲2の例に加え,上記3の審尋によって示した別掲3の例からも,例えば,「野菜や果物の栄養や秘められたパワーをそのまま取り込むことができるパワードリンクなのです。」や「飲むだけで不調を解消できるパワードリンクがお勧めです。」のように,「体に必要な栄養を摂ることができる飲料」,「体調を整える効果がある飲料」ほどの意味合いを表す語として使用されている事実が認められる。
以上からすれば,本願商標をその指定商品に使用しても,これに接する取引者,需要者は,その商品が「体に必要な栄養を摂ることができる飲料」,「体調を整える効果がある飲料」であること,すなわち,商品の品質を表示したものと認識するにとどまり,自他商品の識別標識としては認識し得ないというべきである。』

 

 

以上です!

 

 

 

 

 

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