「京都黒七味風味 ご当地ふるポテ」で考える 「特許診断」「ひつまぶし」問題

図形の検索システムを斬る!(商標、意匠、著作権)No.1」の第2弾、商標の画像検索サイトを斬ってみようと思ったのですが、今日は商標的面白ニュースがあったので、それに触れてみます。
ロッテリア、商標侵害で販売中止 ご当地ポテト「黒七味」 京都新聞 10月28日(水)7時50分配信
ニュースの概要をいいますと、ロッテリアさんが、ご当地ポテトを7種類出しまして、その京都版として「京都黒七味風味」を販売していたところ、登録商標「黒七味」の商標権者さん(原了郭さん)から警告書を送られたため、迅速に対応、円満解決したというニュースです。
ロッテリアさんの対応には好感が持てて、結果としては悪くなかったように思いました。
それはそれとして、このニュース、知財人の目でみると、いろいろと面白いですねー。今日はそれに触れてみようかな、と。
わたくしが このニュースで面白いと思ったポイントは、3点。
1.「黒七味」って、へえ、登録商標なんだ~。
2.「○○ぽい」で商標権侵害と言われた系だ~。
3.「黒七味」登録商標の指定商品は香辛料系なんだけど、ロッテリアさんが売ってたのはフライドポテトだね~。
んでは、この3点につき、順番にいくのだ~。
1.「黒七味」って、へえ、登録商標なんだ~。
いやいや、このニュース見たとき、そう思った方もいたんじゃないですか?
登録商標「黒七味」の経過情報見てみると、やはり「識別力なし」として3条1項3号(&4条1項16号)で拒絶査定され、審判までいっておりました。
でも審判では、(3条2項適用じゃなくて)登録審決なされております(不服2007-3385)。
「黒」の文字を冠して一連に書した構成からなる本願商標より、取引者、需要者が、原審説示の如き意味合いを直ちに認識、理解するものとはいい難く、また、これが特定の意味合いをもって親しまれ、あるいは、特定の商品の品質(内容)を具体的に表示するものとして、一般に理解されているとは、認め難いところである。
 また、当審において調査したところによれば、本願の指定商品を取り扱う業界において、請求人が本願商標を使用している事実は認められるものの、それ以外に、該文字が取引上普通に使用されていると認めるに足りる資料を発見することもできなかった。
しかし、裏を返せば、審判までいかなければ登録にならなかったということでもありまして、加えて、七味唐辛子というメジャーな商品の性格も考えたら、放っておいたら普通名称化しやすいともいえないことはないかも。
という面からしても、原了郭さん的には放っておけないところ(もっとも、「原材料も味も全く異なる」というのが、警告状送りたくなった一番の理由だったように推測しますが…)。
ちなみに…
弊所も「特許診断」なんていう「識別力、ほぇ?」な登録商標の専用使用権者なので(商標権者と専用使用権者のボーダー曖昧w)、あそこのアレがアレなんですけどが…
いや、なんでもないです。
2.「○○ぽい」で商標権侵害と言われた系だ~
登録商標○○が、他社商品の表示の中で、「○○系」とか「○○風」とか「○○タイプ」とか、「○○ぽい」感じで使われとると、とっさに 「シャネルNo.5か!」 と思ったアナタ、どんだけ知財ヲタクなんですか。
思い返すと、「シャネルNo.5事件(H3(ワ)7534)」では、被告さんが自社の香水について、パッケージに次のようなプリントをしておりました。
(1)パッケージの真ん中に「シャネル(上段)/No.5(中段)/タイプ(下段)」とプリント
(「シャネルNo.5」は小さい文字だけど、橙黄色の地の中の灰色の円形の中)
(2)パッケージの下の方に「CHANEL No.5(R)をお気に入りなら、この香水もお気に召すことでしょう」という意味の説明文(英文)をプリント
(「CHANEL No.5」は太文字&書体が他と異なる)
いずれのプリントについても、裁判所は、「商標として使用している」として、シャネル商標の商標権侵害を認めたのでしたね~。
「シャネル」が著名な商標であることと、被告さん商品パッケージでの「シャネルNo.5」「CHANELNo.5」の表示が目立つ感じにしてたことがポイントだったと思います。
んでは。
「京都黒七味風味 ご当地ふるポテ」は、どんな表示だったんでしょうか?
(パッケージを見てみる→ http://news.walkerplus.com/article/64291/image358897.html )
ぎゃあっ!!! ヽ(゚Д゚;)ノ!!
われらが名古屋の「ひつまぶし」が~!!!
ひつまぶし」も蓬莱軒の登録商標(第1996631号)だがね…
いや、なんでもないです。
ちなみに、今回のポテト事件と「シャネルNo.5事件」は、いずれも『「○○ぽい」表示』が問題となりましたが、両者の違いは次の点でしょうか。
・シャネルNo.5事件は「○○タイプ」という表示だったけど(指定商品も被告商品も香水、つまり同じ商品)、ポテト事件は「○○風味」(○○flavour)という表示だった(一方は七味唐辛子で他方はフライドポテト、つまり非類似商品)。
・ポテトの表示は、「シャネルNo.5事件」のように、「○○ではないけどね」という旨を明示or暗示してない。
と考えると、今回のポテト事件の「○○風味」表示は、次の3.の問題に近いことになるかな?
3.「黒七味」登録商標の指定商品は香辛料系なんだけど、ロッテリアさんが売ってたのはフライドポテトだね~。
香辛料とフライドポテトだと、「材料(?) vs. 完成品(?)」の関係で、単なる材料?表示に思えますな。
とくると、とっさに「タカラ本みりんか!」と思ったアナタ、どんだけ知財ヲタクなんですか。
思い返すと、「タカラ本みりん事件(H10(ワ)10438)」では、被告さんが自社の「だしつゆ」の容器に、こんな表示をしたラベルを貼っておりました。
http://www.hanketsu.jiii.or.jp/hanketsu/jsp/hatumeisi/news/200106news.html

裁判所は、この「タカラ本みりん入り」という表示を「商標としての使用でない」として、タカラ商標の商標権侵害ではないとしたのでしたね~。
「タカラ本みりん」が著名であることで、逆に「一般ピープルは原材料と思うじゃんね」と判断されてしまったのでした。
んが、この判決だけで「著名な原材料商標ならなんでも大丈夫」と考えるのはリスキーな気がします(ここでは、「黒七味」が著名かどうかの議論はちょっと置いとくね)
もっとも今回は、指定商品(七味唐辛子)とフライドポテトとでは非類似商品ってことが、この判決と違うところですが、ポテトに原了郭さんの「黒七味」が使われてなかったようなので(「味が全然違う!」と思われたよう)、そうなると、品質保証機能を害してると言えないこともない。これって、裁判所だと、どう転ぶかわからんところです(不競法2(1)13っていう別の問題も考えられなくはないかもしれんです)
といったよーに、いろいろと面白ポイントのあるニュースでございましたが、
ロッテリアさんが迅速な対応を取ったので、企業イメージにも傷がつかずによかったのでは(そこで争ってもね、という感じもありますし)。
今日はそんなところ。
次回こそは、「図形の検索システムを斬る!(商標、意匠、著作権)No.1」の続きを書くつもりです(またしても予定は未定)。
次回も見ていただけるならぽちっと押してくださいな(。-_-。)/
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コメント

  1. かなり前にも「リカちゃんステップワゴン」というおもちゃがあってCMまで放送しました。ステップワゴンはホンダの登録商標です。ホンダから警告行ったよかな?「リカちゃんミニバン」にすべきだったです。

    • ぬらいわさん。コメントありがとうございます。(あくまで推測でしかないですが)CM放送するくらいなので、ホンダさんから使用許諾を得ていたかもしれませんね。

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